はしがき
気象業務の目的の一つは、気象災害を防ぎ、社会活動を円滑に推進するため、ユーザーが望む気象情報をタイムリーに提供することです。これには現在の気象状況を正確に把握し、これに基づき将来の気象を精度良く予測し、見込まれる気象状況で発生する災害を想定し、災害を防止するための注意を促すことが大切になります。
1999年9月、九州の熊本県に上陸した台風9918号は、小型ながら勢力が強く、この強風と高潮により、家屋の倒壊や床上浸水等の甚大な災害が発生しました。このような気象災害は、住民の避難等の適切な対応により、さらに軽減されることができると考えられます。そのためには、正確な気象情報とその対応策の市民への適切な伝達が肝要になります。
台風の動向を監視するには、気象衛星「ひまわり」が大変有力です。衛星による大気や海洋の観測は、天候に左右されずに観測できる、また広域を瞬時に観測できるというメリットがあります。近年、衛星によるリモートセンシング技術は急速に発展しており、資源探査や農業、漁業、地球科学等の多くの分野で実用化されつつあります。
リモートセンシングを利活用することにより、広範囲な海洋における海上風と波浪を観測することが可能になりました。これらの衛星リモートセンシングデータを気象業務へ利用することにより、正確な気象海象の把握、さらに予報精度の向上につながるものと考えます。
本事業では、衛星による海上風と波浪観測の現状を調査し、衛星から得られたこれらのデータを用いて、台風域内の海上風と波浪の分布特性を調査するものです。これにより、船舶の安全航行、海難防止および天気予報の精度の向上に役立つものと期待されます。
調査研究を推進するにあたり、ご指導を頂きました委員の方々に厚く御礼申し上げます。
平成12年3月
財団法人 日本気象協会
会長 石月 昭二