日本財団 図書館


二酸化炭素は温室効果ガスのため、その大気中の濃度が増加すると、地表温度が上昇するといわれている[注1]。この二酸化炭素の増加は、化石燃料の消費が原因である。化石燃料とは反応(8)により生成された生物体を起源とする。反応(8)は吸熱反応で、その進行の過程で太陽エネルギーが生物体内に蓄えられる。過去に生息した生物が死後、分解されて石炭や石油といった化石燃料が生成する。したがって、単純には、化石燃料を燃すということは反応(8)の逆反応を起こさせることである。このとき取り出されるエネルギーは、過去の太陽エネルギーである。このため、石炭や石油は化石燃料(あるいは化石エネルギー)と呼ばれる。

 

4. 生体鉱物と化石

現在地球上に存在する炭酸カルシウムの大部分は生物活動の過程でつくられ、一般に生体鉱物と呼ばれる。生体鉱物の主な例としては、貝殻、骨、耳石、胆石、尿石などが挙げられる。カルシウムは骨の必須成分である。したがって、それが不足すると骨粗鬆症などの重大障害をもたらす。このように、生体鉱物の大部分は生物がその生存にとって必要であるためにつくられている。しかし、不必要なのにできてしまったものもある。胆石、尿石がその例である。

生体鉱物が保存されると、化石として地質学的解析に利用できる。化石には、堆積時代を示す示準化石と、堆積環境を示す示相化石とがある。最も理想的な示準化石は、全地球的に生存しながら、その生存期間の短かった生物である。一方、理想的な示相化石は、生存期間が長く、生存環境が極めて限られていた種である。生存環境が海水か陸水か、陸水の場合河川か湖沼かなどが知られている化石が発見されると、それを含む岩石の堆積環境を推定することができる。

示準化石として極めて有効な生体片にコノドントがある。その主成分はリン酸カルシウムで、脊椎動物の歯とよく似た構造・成長様式を示す。しかし、動物の硬組織であることは分かっているが、分類上の所属は不明である。このように、生体鉱物は、それがいかなる種に属するかが分からなくても、化石として利用できる場合がある。

貝殻を構成する炭酸カルシウムの酸素同位体組成から、その貝が生息していたときの水温が推定できる。酸素の2つの同位体16Oと18Oの炭酸カルシウムと水溶液との間の交換反応は、

183-1.gif

と書かれ、その分別係数Kca-aqは、

183-2.gif

で定義される[注2]

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION