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3. 海洋法に関する国際連合条約

海洋法に関する国際連合条約は表1に示すように全17部より構成されているが、海洋調査と関連があるのは第13部海洋の科学的調査である。第13部は全6節で第238条から第265条(表2)までであるが、船舶を用いて他国の排他的経済水域で海洋調査をする場合に重要なのは第3節海洋の科学的調査の実施及び促進、第248条沿岸国に対して情報を提供する義務である。

第248条沿岸国に対し情報を提供する義務

沿岸国の排他的経済水域又は大陸棚において海洋の科学的調査を実施する意図を有する国及び権限のある国際機関は、海洋の科学的調査の計画の開始予定日の少なくとも6箇月前に当該沿岸国に対し次の事項について十分な説明を提供する。

(a)計画の性質及び目的

(b)使用する方法及び手段(船舶の名称、トン数、種類及び船級並びに科学的整備の設置の説明を含む)

(c)計画が実施される正確な地理的区域

(d)調査船の最初の到着予定日及び最終的な出発予定日又は、場所に応じ、装備の設置及び撤去の予定日

(e)後援機関の名称及びその代表者の氏名並びに計画の責任者氏名

(f)沿岸国が計画に参加し又は代表をできると考えられる程度

沿岸国の排他的経済水域又は大陸棚で調査を行う計画がある白鳳丸航海では主席研究者が海洋研究所事務部経理課海務掛と相談しながら研究内容をとりまとめ、上記(a)から(f)の項目を含む和文及び英文で文書を作成し、遅くても航海の9ヵ月前に本部研究協力部研究協力課に提出し、さらに今後の諸手続きを円滑に進めるため控えを予め外務省海洋課にも送付する。研究協力課から文部省研究機関課研究所第一係(8ヵ月前)進達され外務省担当課に7ヵ月前までに提出される。外務省から当該沿岸国の在外公館に公電を送り相手国政府に通報する。調査、入域の可否及び調査制限事項などは在外公館・外務省・文部省・東京大学本部・海洋研究所の逆ルートで航海前に連絡される。

我が国が平成8年にこの条約を批准する以前にも白鳳丸が他国の200海里以内で海洋調査を行う場合には、上記の手続きをしていたが、これまでトラブルが生じたのは、南太平洋のフランス経済水域である。昭和44年のKH-68-4次航海以来、ニューカレドニア付近で調査を実施していたが平成4年10月のKH-92-4次航海では7月23日付で便宜供与文書提出していたのにもかかわらず、フランス経済水域近辺で観測作業をおこなおうとしたところ、偵察機及びパトロール艦から照会があり、交信後、フランス政府より外務省を通し、経済水域内で観測作業を行わないよう要請があり、観測を中止した。

 

 

 

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