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日本から発進する「社会システム革命」

日本は食料自給率が極めて低く、食料の自給自足を掲げた場合に、人口問題では世界ワースト1である。この際に、適正人口の目標を掲げ、問題に真っ正面から取り組んで、世界が抱える人口問題への取り組み方を示す絶好の立場にあるといえる。動物タンパク質の自給率を向上させるために、海域を肥沃化して水産物を多くすることは、これまで自然物の採取だけしか行わなかった水産業に水産物の自然育成という極めて新しい視点を加えることになる。日本では、栽培漁業考えられが、それはあたかも水産物を育てているかのようなイメージで語られるが、基本的な生産性には手をつけないで、ただ単に有用水産物の種苗を放流して収穫を上げるというのは、パイの分配を変えるだけで、本来の生産性を上げるものでは全くない。栽培漁業は、成功すれば既存の生態系の破壊であり、失敗すれば生態系は安泰ということになる。これまでの栽培漁業の多くは生態系の防衛により、パイの分け前を多くすることに成功していない。つまり、人間側の負けで、生態系側の勝ちの場合が多い。

さらに、日本は国内の資源のほとんどを使い果たしてしまっていて、資源的に見ても世界ワースト1である。しかし、これまでのような「濃い資源」の利用は「資源の枯渇」と「環境汚染」の問題を起こすので、世界的にはそれらが大幅に軽減される再生速度の速い「薄い資源」の利用を一刻も早く実現させる必要がある。そうした「薄い資源」としては海水資源が考えられ、幸い日本は四面を広大な海に囲まれ海水資源の利用では極めて恵まれた位置にある。「薄い資源」である海水の利用の道を生みだすことにより、世界の資源利用の流れを「濃い資源」から「薄い資源」へと変えていく先達になる可能性が高い。

これらがうまく進めば、社会の持続性が今よりも強化される可能性が高い。そして、その実現は世界的にも最も危機的状態にある日本に可能性がある。「21世紀の社会システム革命」である。

 

2-2-5 海洋生物と形態学

海洋生物の形態学は、生物形態学の研究上、一番問題点が集約されていると考えられる。それは、「生物の本来の形態は、生時の動的で、決して標本という静的な物体に依るものではない」、という理念を再認識させられる存在だからである。

生時の形態をいかに記録し、研究するかについては、海洋生物には以下の特徴がある。

1. 陸上とは異なる「海中」という重力条件に生息している。

海洋生物は、当然ながら生時には海中に存在し、その微小重力環境で維持し得る体構造になっている。そのため、陸上生物である人間が研究のために海中から引き上げると、その時点で重力条件が異なるので変形してしまい、元の形態をとどめない。

 

 

 

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