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これは、D.B.よりもV.B.概念、しかもこの業績判断基準の内化、という機構を用いたほうが、説明しやすいと考えられる。

 

4. 領域の統合とは何か

さて、第2、3項において学問分野あるいは領域とは何か、という問いに対し、V.B.概念を用いて考察してきた。それでは、超領域、あるいは学際研究とはどういうものと考えることができるのだろう。上で議論した異分野摩擦を超え、領域間の知識統合をおこなうには、どのようなことが可能なのであろうか。これらの問いについて考えてみよう。まず、知識統合に関して、3類型を考えることができる。1)analysis:V.B.そのものの統合、2)analysis:V.B.間を引用関係で結ぶ、3)synthesis:複数のV.B.を1つの表にまとめる、の3類型である。これは模式的に図2のように表すことができる。たとえば1)のケースは、生物物理学のように、2つのV.B.をある形で融合させて、1つの新しいV.B.(新しいジャーナル)を作りあげる例として考えることができる。2)のケースは、新しいV.Bを作り上げるのではなく、ジャーナル間の引用関係が増すことによって、各分野の知見が統合されるケースである。環境社会、ストレス科学、といった領域ではこのケースを観察することができる。(藤垣ほか、1996)さらに、社会的提言、政府への助言、国際機関への助言などをめざすときには、これらのV.B.を類似化して表にまとめ、提言や助言に生かすことが行われている。これがケース3)である。ここでこの表にまとめる際に選択される変数、あるいは特徴は、各分野のV.B.に反映されているものとかんがえることができる。また、この3類型の特徴を、表1のようにまとめることができる。本事業における関連諸領域の関係性の可視化作業は、おそらく図2のケース3)を、表作成ではなく、3次元グラフィックによって表す努力と考えることができるだろう。

 

 

 

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