日本財団 図書館


Thank god for giving us the pleasure of sports!!

SPORTS FOR

ALL NEWS

スポーツ・フォア・オール ニュース

2000 MAR.

vol. 35

 

「トランス・カナダ・トレイル2000」

SPORTS ON THE WEB スペシャル

村松友視 「体育会的発想からの脱出を」

 

「トランス・カナダ・トレイル2000」

──カナダのスポーツ・フォア・オール・ミレニアム事業──

SSF会長 小野清子

 

本紙の前号で紹介があったように、国際トリム・フィットネス生涯スポーツ協議会(TAFlSA)の第16回コングレスが11月21日から5日間、地中海の島国であるキプロス共和国で開催され、新千年記(ニュー・ミレニアム)に向けての参加各国(40ヵ国)のSFA政策についての報告が行われたが、その中でも、参加者全員に最も注目と感銘を与えたのが、カナダのSFA推進機関“パーティシパクション(ParticipAction)”のラス・キスビー会長による「トランス・カナダ・トレイル(TCT)2000」プロジェクトの報告であった。

 

周知のように、パーティシパクションは「チャレンジデー」を世界に広めた広報推進機関としてつとに有名であるが、チャレンジデーの成果を十分にあげ得た1990年代初頭に、新千年紀を目指す次の新しいプロジェクトとしてカナダ政府、地方自治体、民間企業、各種のメディア、そして多くのボランティアの英知と努力を結集して、カナダ全土を縦横に結ぶ16,000kmに及ぶ世界最長のレクリエーション・トレイル(遊歩道)の建設計画を提唱した。そのためパーティシパクションが音頭をとり、1992年にTCT財団を設立した。1998年3月にはカナダ政府からミレニアム国家プロジェクトとして公式に認められた。

 

五千人が運ぶオーシャン水リレー

TCT2000プロジェクトの狙いは、新しい世紀を迎えるカナダ全国民に対して、身体活動、レクリエーション、生活の質の向上の機会を提供すると共に、多様な地域、文化、風土の中で生活する人々の交流・結びつきを促すことであった。人々がカナダの広大で豊かな自然環境を探索することによって、自然の偉大さと恩恵を理解するきっかけ(gateway)を与えることも強調している。

このプロジェクトを具現化するために、カナダを取り巻く3つのオーシャン(太平洋、大西洋、北極海)の水を3地点で採取し、カナダ全土から公募で選ばれた5,000名の“オフィシャル・キャリア”のリレーによって運ぶ。そのルートを整備し、「トランス・カナダ・トレイル(TCT)」として完成させていく。スタート地点は、太平洋側はブリテイッシュ・コロンビア州ヴィクトリア市、大西洋側はニューファンドランド州セントジョーンズ市、北極海側はノースウェスト準州ツクトヤクツクの3地点で、2000年2月に各リレー隊員(キャリア)がボトル1ないし2本に入れたオーシャン水をバックパックに背負って同時にスタートし、オリンピックの聖火リレーのように、その水をトレイル沿いの各地域での多彩な歓迎セレモニーを受けながらリレーし、2000年9月9日に首都オタワに合流し、このプロジェクトのために新しく造られた「TCTの泉」に3つのオーシャン水が注がれ、国民が一体となって成し遂げたミレニアム事業のシンボルとして永久に保存されることになる。

“オフィシャル・キャリア”は心身のハンディキャップを問わず、6歳以上の国民で12ドルの申込料金を払えば誰もが志願でき、その結果、年齢、性別、地域性を考慮して、本年1月末日に多数の応募者の中から5,000名が選ばれた。キャリアは自分の体力、能力、活動経験、トレイルでの実施可能性に応じて、ウォーキング、ランニング、サイクリング、乗馬、ローラースケート、車いす、クロスカントリー・スキー、スノーモービルの活動から1種目を選択して1km〜10kmの距離を移行し、次のキャリア隊員にオーシャンの水の入ったバックパックを手渡していく。

 

001-1.gif

トランス・カナダ・トレイル(TCT)2000

 

SFAのノウハウが実現した新千年紀事業

パーティシパクションのキスビー会長の報告によると、TCT2000プロジェクトには現在すでに800自治体が参加を表明しており、延べ100万人の国民がトレイルの建設や寄付、ボランティア活動など何らかの形で関わりをもつことが期待されている。たとえば、トレイル1メートルにつき建設費の寄付金40ドルを募ったが、すでに1,100万USドルの寄付金が集まり、連邦政府からの助成金400万ドルと合わせて1,500万USドルの予算で事業を展開している。寄付者の名前はトレイルの適当な地点に設置されたパビリオンの「キロメータークラブ」パネルに刻まれる。

このプロジェクトの陣頭指揮に当たっているのがパーティシパクションから出向しているナンシー・ヤマグチ氏で、彼女と共に32名の専任スタッフが情熱を傾けて取り組んでいる。

カナダ全土を縦横に結ぶ16,000kmのTCTは、既存のレクリエーション・トレイルを基盤にして、州および国立公園内の敷地、鉄道の廃線用地および鉄道沿いのトレイル、さらに私有地所有者から提供された土地を利用して整備・建設される。TCTの整備・建設および完成後の運営は、原則としてトレイルのルートにある各自治体によって行われる。

TCTプロジェクトをカナダの全国民、全コミュニティに呼びかけ、何らかの形での参加を促すために、主要地域にTCTセンターを設けると共に、インターネットのホームページを開設している(http://www.tctrail.ca)。ここでは、オーシャン水のオフィシャル・キャリアの申込みや寄付の受付、最寄りのトレイル・コース・ルートの紹介、リレーの進行状況、各コミュニティの記念イベントなどの情報が提供され、誰もが容易にアクセスできるようになっている。また、ホームページを通じてTシャツやジャケット、帽子、クロススレッド(そり)、オフィシャル・カレンダーなどのTCTグッズも購入することができる。

TCTリレーを通じて、ブレンド国家といわれるカナダの国民の健康と生活の質の向上、一体感を醸成させ、コミュニティの連帯感を促すこの壮大なミレニアム・プロジェクトは、パーティシパクションがこれまで築いてきたSFAのノウハウがあるからこそ、政府公認の国家プロジェクトとして認められ、多くの支持を得て着手されたのである。我々との交流を大事にしてくれているキスビー会長はじめパーティシパクションのスタッフに、TCT2000プロジェクトの成功を祈って熱いエールを送りたい。

 

001-2.gif

 

 

 

目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION