日本財団 図書館


Thank god for giving us the pleasure of sports!!

SPORTS FOR

ALL NEWS

スポーツ・フォア・オール ニュース

1999 MAY.

vol. 30

 

障害者スポーツ界に新たなS・F・A(スポーツ・フォア・オール)の動き

SSFスポーツエイド平成11年度交付団体決定

平成11年度SSF事業予定

 

アクセル・ベッカー

「政府のスポーツ振興とクラブの期待」

こまつなおゆき

「フレッシュマンに贈る4つのチェック」

若林正人

「国旗はためくもとに!」

根本幸夫

「気候風土と病気の関係」

 

 

障害者スポーツ界に新たなS・F・A(スポーツ・フォア・オール)の動き

 

昨年春の長野冬季五輪、それに続くパラリンピックにも多くの観客が足を運びました。初めて目にしたアイススレッジホッケー、チェアスキー、バイアスロンなど、まさに目からウロコが落ちたように、競技スポーツとしての認識が人々の間に生まれました。そうした追い風を受けて、障害者スポーツを取り巻く環境が大きく様変わりしつつあります。

 

障害者スポーツ団体に一本化の動き

 

身体障害者のスポーツを統轄している国際パラリンピック委員会(IPC)には、障害別の国際組織と国単位の組織が加盟しています。日本では財団法人日本身体障害者スポーツ協会のもとに競技別のスポーツ団体が構成されています。

知的障害者は、国際知的障害者スポーツ協会(INAS - FMH)という国際団体に、国単位の組織が加盟しています。日本の統括団体は、社会福祉法人「全日本手をつなぐ育成会」という、保護者の会が中心となった組織です。INAS - FMHは、これまでIPCに加盟せず、国際大会も独自に開催してきたため、知的障害者がパラリンピックに出場することはありませんでした。同様に国内においても身体障害者と知的障害者が同じ競技会に出ることはありません。知的障害者の場合、スポーツというよりも健常者との交流を図るレクリエーションの要素が強かったのが原因です。

しかし、INAS - FMHの強力な働きかけにより、知的障害者が国際的な大会に参加できるようになりました。1996年のアトランタパラリンピックで水泳と陸上競技に初めて参加したのを皮切りに、長野パラリンピックでは、クロスカントリースキーに出場しました。そして2000年に行なわれるシドニーパラリンピックでは、陸上競技、水泳、卓球、バスケットボールの4競技が正式競技として決定しています。

 

001-1.gif

清水一二=撮影 Photograph by Kazuji shimizu

 

国内では2001年の宮城国体から、毎年国体の後に行われてきた「身体障害者スポーツ大会」と知的障害者のスポーツ大会「ゆうあいぴっく」が合体し、「障害者スポーツ大会」がスタートします。

このように国内外で、身体障害、知的障害を問わず大きな競技大会に出場できるチャンスが増えてきたことを受け、「育成会」の中に「知的障害者スポーツ対策委員会」が設置され、日本身体障害者スポーツ協会に知的障害者も加わろうと準備を進めています。

また、現在、知的障害者のスポーツ競技団体が次々に設立されています。サッカーの競技団体、日本ハンディキャップサッカー連盟が2月13日に設立されたのを皮切りに、3月15日に日本知的障害者卓球連盟、同21日に日本知的障害者バスケットボール連盟が設立されました。シドニーパラリンピックの競技として決定している陸上競技や水泳でも団体が設立される模様です。

これらのスポーツ競技団体が「全日本知的障害者スポーツ連盟(仮称)」をつくり、日本身体障害者スポーツ協会に加盟、本年度中に「日本障害者スポーツ協会」と名称を変えて、身体障害者と知的障害者のスポーツ競技団体が一つになる計画です。

 

「障害者スポーツ支援基金」の設立

 

さて、競技団体ができると、次の課題は選手の強化です。昨年7月、長野パラリンピックを契機に「障害者スポーツ支援基金」が設立されました。政府出資金3百億円を基金として、社会福祉・医療事業団がその運用益で助成を行なっています。助成金は、全国規模の「一般分助成」、独創的、先駆的な活動への「特別分助成」、地域的な活動の「地方分助成」の3種に分かれています。

平成11年度は、87団体が行う98事業に対して総額約3億3千7百万円の助成が決まっています。昨年度の助成が、17団体の24事業に対して総額約1億9千2百万円だったことを考えると、助成金で1.7倍、件数にして4倍の事業に対して交付しているわけです。ちなみに申請件数は、一般分、特別分ともに38事業、地方分は155事業でした。

そのうち最も多額の助成を受けているのは、(財)日本身体障害者スポーツ協会で、ジャパンパラリンピック大会の開催や選手強化のための国内合宿、パラリンピック世界大会への派遣事業など8事業に対して合計1億5千7百万円強の助成を受けています。

次に多いのは前述の「全日本手をつなぐ育成会」で、INAS - FMH主催の国際知的障害者選手権大会への派遣事業や、シドニーパラリンピックに向けての選手強化事業など5つの事業に合計2千6百万円弱の助成を受けています。

また今年度は、日本ティーボール協会のように、もともと障害者に特化した組織ではないスポーツ団体への助成もみられます。健常者、障害者と区別してしまうのではなく、一般の競技団体が障害者を積極的に取り込んでいく動きも徐々に活発になってくるのではないでしょうか。

こうした動きは、今まで組織の再編成や資金援助の強化といった環境の変化が立ち遅れていたわが国の障害者スポーツにとって、前向きに一歩を踏み出すきっかけとなる歓迎すべきことです。こうした変化が、スポーツ・フォア・オールの推進に大きな刺激となることを期待したいものです。

 

障害者スポーツ支援基金 助成金交付事業集計表

001-2.gif

社会福祉・医療事業団のホームページ http://www.wam.go.jp/ などから作成

 

 

 

目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION