大鹿歌舞伎は、「地芝居」と言われる農村歌舞伎の伝承芸能です。南アルプスの山々に抱かれた大鹿村に歌舞伎が伝わってきたのは一七〇〇年代と言われています。当時、江戸幕府は農民が歌舞伎に夢中になり、仕事をしなくなるとして歌舞伎禁止令を発令していました。しかし、大鹿村では地芝居は村人の交流の場、村に活力を生む文化として暮らしに定着し、今に受け継がれてきました。村人による定期公演は、五月三日と十月第三日曜の春秋二回。演者と観客が渾然一体となって繰り広げられる感動的な舞台は、時を越えて、歌舞伎をこよなく愛した人々の心を伝えてくれます。
八戸のえんぶり
青森県ハ戸市
出演/八戸地方えんぶり連合協議会中居林組
国指定重要無形民俗文化財
その年の豊作を予祝して演じられる田植踊の一種で、青森県八戸市周辺で二月十七日から二十日まで行われています。初日の早朝、大きな烏帽子をかぶった三〜五人の烏帽子太夫と舞い手の若者などからなるえんぶりの各組が神社に祈願の賃を奉納したあと、稲荷様の輿を押し立てて家々を祝福して回ります。「えぶり」とは田をならす農具のことで、これがなまって「えんぶり」となったといわれています。この農具の柄の方の先に白紙を巻き、松の葉をつけたものを持った烏帽子太夫が、笛や鉦・太鼓の囃子にあわせて田植の所作を演じます。曲の形式には、ゆっくりとした「ナガえんぶり」、テンポの速い「ドウサイえんぶり」の2種類があります。