日本財団 図書館


水生昆虫、トンボ類成虫ともに、長谷に比べ府大圃場では優占5種の占有率が高く、特定の種が突出する均衡性の低い群集構造が形成されたことが明らかになった。

目ごとに季節消長を比較すると、トンボ目幼虫では両調査地で種数、個体数の変化に大きな差は見られず、7月以降個体数はわずかに増加した。カメムシ目は、長谷ではミズカマキリなど水中で越冬する種が生息するため調査終了時まで個体数は多かった。しかし、府大圃場では11月にケシカタビロアメンボ、イトアメンボ、コマツモムシの3種が減少したことにともない密度が低下した。コウチュウ目は、長谷では9月から10月にかけて種数、個体数ともに増加したが、府大圃場では常にみられたのはチビゲンゴロウ1種のみで、9月以降の密度の増加は見られなかった。

以上のように、現在でも稲作が営まれている山間地では、ため池の造成直後にすみやかに多くの水生昆虫が移入し代替的な生息場所になりうると考えられた。一方、都市部の緑地では、造成したため池に移入してきた昆虫の種数は少なかったが、長谷で見られない種も含まれ、また一時期のみに見られた種もあったことから、水生昆虫の移動・分散の中継地としての機能も果たしていたと思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION