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親潮水(亜寒帯水)の南限に形成される前線を親潮前線、黒潮水(亜熱帯水)の北限に形成される前線を黒潮前線と呼ぶ。黒潮水と親潮水とは直接接している訳ではなく、2つの前線の間には混合水域と呼ばれる遷移領域がある。親潮系の水は、この混合水域に比較的浅い層をなして舌状に南方に張り出してくることが多く、本州東方岸沿いに張り出すものを親潮第一分枝と呼んでいる。

日本海には、日本岸沿いに対馬海流が流れている。この流れの主な駆動力は、北太平洋内の大循環(亜熱帯循環と亜寒帯循環)によって作り出された、九州西方の水位と、津軽海峡の太平洋側の水位の差であるが、特に大きな水位差は津軽海峡の東西の間に現れる。大雑把に言うと、この水位差に基づいて日本海の表層の水が津軽海峡から太平洋に引き出され、それを補う形で東シナ海の水が対馬海峡を通って日本海に入り対馬海流を形成する。よく九州の西方で黒潮が分枝して、その1つが対馬海流として対馬海峡を抜けていくような海流図が画かれるが、九州西方には明確な北上流が観測されることはない。むしろ、東シナ海の大陸棚の端に沿って流れる黒潮水と、浅い大陸棚上にある沿岸系水との混合水が九州西方に停留しており、その水が上に述べた機構で日本海に流入すると考えるべきである。したがって、日本海に流入する水は顕著な季節変化を示す。対馬海流の一部は津軽海峡に抜けずにさらに北に流れ、宗谷海峡からオホーツク海に入って、宗谷海流を形成する。日本海と隣接する海をつなぐ海峡はいずれも浅く、日本海の深層循環は他の海洋から切り離されていて、日本海固有水と呼ばれる極めて一様な水が存在する。

海流は、川の流れのように流路が固定されておらず、非常に変動性に富んでいる。したがって、航海や漁業に取って、あるいは難破船や油等の漂流予測において、海流の現況を知ることが非常に重要である。海上保安庁水路部では、月2回の割合で海洋速報(一例を図I-4に示す)および、海流推測図(一例を図I-5に示す)を発行している。また、各管区海上保安本部水路部でも、担当海域について、より詳しい海洋速報を刊行している。これらの情報は印刷物として、(財)日本水路協会海洋情報室から一般に提供されている他、一部は海上保安庁水路部のホームページで見ることが出来る。また、海洋情報室では、独自に週1回(金曜日)相模湾・伊豆諸島近海海況速報(一例を図I-6に示す)を作成・提供している。この他各都道府県水産試験研究機関では、それぞれ漁海況情報の速報業務を行っている。特に、東京都・静岡県・神奈川県・千葉県は土・日・祭日を除く毎日、一都三県漁海況速報を発行している。これらの情報は年毎にまとめられて、CD-ROMの形で海洋情報室から提供されている。

 

 

 

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