今深さdにおける重力値g(x)の推定を行なうものと仮定しよう。海水面における重力の観測データg0(x)としよう。これは下方接続の演算子{2πkd}とフィルターW2(k)の(A1)式を使って得られるものである。(A1)式のGに付けられたサーカムフレックス(山形の符号)は、これが重力場の下方接続によって得られた推定値であることを示している。
深さdにおける真の重力場は(A2)式によって与えられる。ここで、s(x)はいわゆる「信号」であり、観測される重力値は信号とノイズ両者を含んでいる。
これは(A3)式で表現される(この付録において、sは信号、nはノイズをあらわしている、しかし、この論文の他ではどこでもSは逆ネッテルトンプロシージャーから得られる傾斜をあらわしている)。Eの推定値に対する誤差の平方和を積分すると(A4)式であたえられる((A4)式の二番目の等式部分はレイリー理論にしたがって得られるものである)。またウイナーフィルターはW2であるがこれはEを最小にする条件から得られるものである。ここで最初の三つの式を4番目の式に代入すると、シグナル・ノイズの積SN*とNS*(アスタリスクは共役複素数をあらわす)が得られる。これらは信号とノイズ間のクロスコバリアンス(クロス共分散)のフーリエ変換をあらわしている。これらのシグナル・ノイズ間に相関関係がないとすれば、これらの項はゼロになる。ここでシグナルとノイズのパワースペクトルは等方的であると仮定すればベクトルkはスカラーkと考えて良いので、その結果(A5)式が得られる。様々なW2に関するEの定常点は次のようにEをW2について一階偏微分したものを零とおくことによって得られる。∂E/∂W2=0
これから、(A6)式が得られる。この式は確かにEを最小にする。これを更に微分することによって、(A7)に示すように正であることからわかるであろう。
ここで、変分を計算すれば(A6)は被積分値が零の時満足される。即ち(A8)式が成り立つ。ここで(A8)式のR(k)は(A9)式であらわされる。これはシグナル・ノイズ比(SN比)の振幅の自乗を波数の関数であらわしたものである(これはSN比のパワースペクトルそのものである)。注意すべき事は、W2がexp[4πkd]に依存しないことである。即ちウイナーフィルターW2はgとg0を関連させるコンボリューションオペレーターに依存しないことである。サンドウエルとマックドーは完全な繰り返し測定の調査をまったく同じ軌跡のデータについておこなった。その側線上でジオサットの高度計測定を時系列で展開し、対になったデータ間のコヒーレンスを確かめている。
これらのデータのコヒーレンスはジオサット高度計に関するR(k)を推定するのに使用することが出来るだろう。というのは、サンドウエルとスミスの92年の論文で扱っている重力場はジオサットの測地学的調査データによって主にあらわされているからである。そこで次の期待が成り立つ即ち、格子化された重力場に関するRの値は90年サンドウエルとマックドーによって得られた値にほぼ同じであるということである。
仮に2つの高度計の時系列データに同じ信号とノイズがあり、それが相互に相関が無く、2つのノイズが同じスペクトルを持つと仮定すれば、コヒーレンスは(A10)式のように求められる。この式から明らかなように、Rが小さい場合γは1に近く、Rが大きい場合、γは零である。90年にサンドウエルとマックドーはγをプロットしてγが0.5の所の波長(1/k)を推定している。