正規分布のΣに関する期待値はσ/1.4826である。Σの計算に使った荷重はこのσの推定値をウィンドウの中心近傍の点に、より依存させるようにする傾向がある。分布の平均値が未知の場合には、まず平均に関する標準偏差を計算する、同様に、Σは何らかの位置の推定値に関するデータのメディアンの偏差の絶対値として通常計算されるものである。ここではΣはデータのメディアンの絶対値を使って計算している。これはデータがゼロ近傍に分布していると仮定した時の値に等しくなっている。この結果として、S=±σh/σgとすれば、Sは原点を通る直線の傾斜になっている。
ここでは非パラメトリックなτの推定値をもちろん使っている。gとhの相関でいわゆるケンダールのタウと呼ばれているものである。
通常の線形な相関係数と同じくτの大きさはτ≦1であってその符号は相関のセンスすなわち右上がり右下がりなどの傾向を表している。τの分布は(H0)に関してゼロ、すなわちヌル(帰無)仮説のとき、別の言い方をすればgとhが相関がない場合、この仮説が棄却される信頼値を計算することが出来る。すなわちこれは、相関があることを示す信頼値である。
分散分布のプロット(6a、6b、6cの最下段の図)は当該地域で決定されたτの値を示している。もちろん、それらは、図で破線や実線で示されている。原点をとおる実線が引かれているがこれは±σh/σgの傾斜を持っておりΣ手法で推定されたものである。
ここで使用されている符号はτの符号から決められている。破線は同様の手法によって作られたもので、σを推定するために荷重付き平均平方和の正の平方根を使っている。また傾斜の符号を決定するために通常の線形相関係数を使っている。地域AとBとでは結局Σメソッドが大多数のデータに適合し、より近接しているように見える。それに対して破線のほうはデータから外れるような傾向がある。地域Cでは相関係数の符号が相互に異なっている。しかし両者ともにその大きさが小さくH0が棄却される信頼値ももちろん小さくなっている。すなわちこれらのデータは際立った相関を示していないということである。
H0を棄却できる信頼値とτの推定値を図7の上段2つに示してある。これはすべてのネッテルトン格子点で計算したものである。これらのいくつかは、図7の最下段に示した主要な地質学的特徴と関連づけられるだろう。この両者は利用すべきデータのないところではゼロとして示されている。ほかの大部分の地域では、相関係数の信頼値は99%以上である。相関係数はいくつかの大陸棚の縁(斜面)のところでは特に高くなっている。またいくつかの活発なプレート境界(中央大西洋海嶺、南西インド洋海嶺、スコシア海にあるチリ海溝、ジョルト海溝、トンガ海溝など)でも相関係数が高くなっている。これは、アサイスミック(地震活性度の低い)ルイズビル海嶺、ブローケン海嶺と同様である。これらのすべての地域では図6aの地域と似ており、g、hの信号が大きくなっている。相関が低くむしろ、ややゼロよりも小さく、信頼値も勿論小さい地域はアビサール平原である。これらの地域は図6cのC地域と良く似ている。その他の地域は中間的な値に落ち着いている。
中央太平洋海嶺とエルタニン断列帯系の交差する地域(220°E、55°S)のネッテルトン格子点上では、強い負の相関があり且つ信頼値も高くなっている。これは勿論理論から期待されることに反している。