看護婦にとってコミュニケーションとは、患者との人間関係を確立していくプロセスであり、またチームアプローチを効果的に行うためのプロセスとしても重視したい。私は今までチームの中で自分のコミュニケーションのまずさを感じとることがたびたびあった。“何を何の目的で伝えたいのか”という問題の明確化と、それを相手に適切に表現する技術を高めていくことが、チームアプローチにおける私の課題である。
看護倫理
終末期医療の臨床においては、患者の人間としての尊厳や権利に関わる問題が常に存在する。しかし、自分自身を振り返ると倫理的課題に直面しながらも、その側面を見出す能力、感受性に欠けていたと思う。また、問題を感じながらも何をもとにどう判断するのかわからず、倫理的判断のよりどころがないため信念をもって話すことができず、「これでよいのかなりと疑問を残してしまう結果になっていた。サラT・フライは著書「看護実践の倫理」のなかで、倫理的意志決定は、倫理的感受性と道徳的推論能力の発達によるところが大きく、倫理規定、看護の倫理的実践基準、倫理の概念、価値形成を学ぶことが役立つと述べている。小島先生の講義の中でも、倫理的判断のよりどころとして看護婦の倫理規定を提示された。それは、人を尊重することを根底におかれたもので、基本となっている倫理の原則について詳しくふれられた。その中で特に印象に残ったことをまとめると、
1]自律の原則では、自己決定の尊重がこの原則によるものであるが、患者が自己決定できない、または守られない状況におかれていないかどうかを考える必要があること、もしそうであるならば、自己決定を妨げている因子は何かを明確にすること。自律性が低くなっている人は保護されなければいけないことである。2]善行の原則では、自分達の責任範囲を明確にしておく必要と、善と害の見方、考え方である。私が臨床で問題を感じる場面として、病状、予後の告知、治療の選択、セデーションに関することが多い。これらを倫理的に判断していくために、倫理上の基本原則を自分の知識として常に取り出せるようにしておきたい。また、講義の中で、自分の看護観や死生観も倫理的判断のよりどころの一つとしてあげられた。自分自身の価値体系を明確にした上で他者の価値体系を理解し、看護婦としての専門的価値を自分の価値体系に組み入れていくことであると考える。そして、専門職業人として終末期医療に対する自分なりのフィロソフィーを確立していかなければいけないと思う。
意志決定のプロセスについては事例検討したが、自分の中で十分理解できたとは言えない。サラT・フライの述べる看護実践における倫理的、文化的、多様性のための意志決定モデルには、4つの課題が含まれ、それは価値の対立を焦点化していくことで解決していく能力を高めるものである。このモデルについてさらに学びを深め、あてはめて考える訓練をしたい。
看護婦は、“何のためにそれを行うか、それを行うことがその人にとって何故良いのか”ということを倫理的側面から慎重に判断していくことが不可欠である。そしてそれは、すべての看護実践にとって普遍的に重要であることを肝に銘じておきたい。
おわりに
すべての研修プログラムを終了し振り返って考えてみると、実に多くの学びを得、前に述べてきたように今後の課題を見出すことができた。
この機会を得たことで、ホスピスナースとしての自分を見つめ直し、進むべき方向性を見極めることもできた。一つ一つの課題については今後さらに学びを深め実践に結び付けられて初めて意味があると思う。そして常にケアを振り返り考えながら、問題の本質を問い、より質の高いケアを提供していけることを目標にしたい。