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その中から、最も自分が認識できていなかった点について振り返り考察する。

それは、家族内相互作用の強化ということである。家族が終末期患者を抱えることによって多大な影響を受けることは前にも述べたが、個々の力では抗し難いストレスを、家族成員の力を結集して、一単位としての集団の力を最大限に発揮していくことで可能にしていけるのである。家族個々に対する支援だけでなく、一単位としての家族の支援を援助目標に向かって統合させていく必要性を強く感じた。それを考え、実践する上で家族看護学という視点からの基本的知識が重要となる。システムとしての家族、そして家族プロセスを理解する上で、適応力、統合力がキーワードとなる。問題に直面した家族の誰がリーダーシップをとり、どれだけまとまって力が出せるか、助け合い、共有し合い、どういう解決方法を取っていくのか。

それらを理解した上で、看護婦は誰にアプローチすることが家族の力を引き出せるかということを判断していかなければいけないのである。一単位としての家族とより良い援助関係を築いていくためには、それぞれの家族成員の立場や心情を深く理解し、どのような状況、行動を示そうともそこに至った必然性をその個人の立場で理解しようと努めることが大切である。それは看護婦に中立性をもたらすことになる。そして、家族が問題解決のための力をもっている可能性を信じながら家族自身の決定を尊重し、家族の望む解決が実現できるように支援することが、家族援助の目標であると考える。

 

コミュニケーション

 

この研修では、多くの講義の中でコミュニケーションの意味についてふれられ、看護婦にとってその能力を高めることは看護実践におけるすべての出発点として必須であることを痛感した。講義の内容、体験学習を通し、自分自身を振り返り考察したことをまとめる。

チームアプローチの講義で繰り返し行ったロールプレイの中から自分の傾向や弱点が少しずつ明確化されてきた。私は日頃、患者、家族と向き合う時、傾聴、共感という姿勢を大切にしてきた。しかし、その言葉の意味や目的をどこまで理解できていたのだろうか。まず、その2つの点を中心に考えてみたい。

私は、傾聴しているつもりでいたが、何か答えを出そうと自分自身に意識を集中させていることに気づいた。臼井は傾聴する時の心構えとして4つの項目をあげているが、その一つとして自分の関心と注意とエネルギーのすべてを相手に注ぎ共にいようと決意することと述べている。さらに、身体から出るメッセージを見落とさないことについても述べられている。講義の中でも本当に訴えたいことは言い出しにくいものと言われていたが、表情や声の調子から受け取る感性と、そこでもう一歩踏み込んでいく勇気が必要だと感じた。

共感、それは相手の気持ちや感情を共に感じる心を持つことと理解していた。しかし、相手の立場を理解した、共感できたということが相手に伝わらないと始まらないということを学んだ。私は、言葉でそれを適切に伝えたり確認していくことが十分できていなかった。さらに共感できるということは、自分自身の立場や視点からではなく、相手の訴えを相手の立場から理解することであり、それは個人の価値観や人生観を理解することから始まるのである。“わかったつもり”でいた自分に気付かされた。

“自己受容”これも大きな学びである。自分自身と向き合うことは大変な作業であるが、他人との関わりにおいて自分の心の動きや感情に気付き、受け入れていく。そしてコントロールしていくことが必要なのである。まず自分と向き合うことで他人とも向き合えるのである。これらのことはコミュニケーションスキルの基本として、ただ技法に注意を払うというものではなく、自分の内なる態度、感情を成熟させていくことで深めていきたい。

 

 

 

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