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患者・家族のライフスタイルを考慮した援助を

 

神戸徳洲会病院

山下 明美

 

はじめに

 

研修センターにおいて緩和医療・緩和ケアについて、基本的考えを学んだあとの実習は裏づけができ、現場の中からしか学べない心の会話がありました。

平成11年11月15日から11月26日まで、神戸アドベンチスト病院で実習をさせていただき、当初の目標などほぼ自分の中で確立できたので報告いたします。

【研修の動機】

患者の死に立会い“これでいいのだろうか?”という治療がなされている時があります。専門的に緩和ケアを学び、自分の死生観が看護の立場で実践でできればと思い受講した。

【研修の目的】

研修で学んだことを実習を通して統合し、緩和ケアに対する知識・技術を深める。

【研修の目標】

1] 見学・実習を通して、緩和ケアにおける看護の専門性について考えを深める。

2] 一般病棟で緩和ケアを進めるにあたって、医療チームの中で他の職種と協力して、患者のケアを担う看護の役割を理解する。

3] 生命の質について考えを深め、死生観を記述することができる。

 

実習を通しての学び

 

初日は情報収集と病院の構造理解に時間がかかり、環境の違いに戸惑いもありましたが徐々に慣れ、自分の目標とする専門性について理解を深めることができました。

環境の大切さは、廊下、外来のスペース等病院の面積をゆったりと取ってあり、アメニティがとても考慮されていることにも現れていました。いたる所に香り・音楽・色彩が考えられて観葉植物や絵画があり、リラックスできるよう花や熱帯魚なども置かれていました。患者さんへの心配りとして、職員の方々も自ら環境整備され、礼儀正しく心優しい言葉遣いで接しておられました。

働く環境も医療向上に欠かせません。病院利用者に対する接遇態度の改善、ホスピタリティーの充実、看護婦・パラメディカル等優れたマンパワーの確保のためにも我が病院においても取り入れていきたいと思いました。

病院の理念は“全人的癒しをめざして”と明記しており、心と身体の癒しを求めて、キリスト教理念に基づいた人間観・健康観をもって運営されています。

予防医療として、生活習慣病であるがん・心臓病・脳卒中の三大死因について健康的生活習慣の実践こそが病気予防の一番の近道として、禁煙・菜食運動をされていました。

院内は全て禁煙で、献立も肉・魚を使わず栄養学的見地や食感を考え、グルテンという食材を用いて日替わりメニューで研究されています。

身体に注意しなくてはいけないことや、患者さんの希望にできるだけ添えるように努力されていました。

次に、幸せな家庭を築くため、現代における性の問題や家族のあり方を共に考えながら、幸せな家庭を築く積極的な体外受精や最先端の不妊治療にも努力を注がれています。

今回実習したホスピスでは、“安らかな人生の終末を”ということで、治癒不能な病気を持った患者さんが、その人らしい安らかな人生の最後を送られるように、最新の症状緩和技術を持ちながら医師・看護婦・チャプレン・理学療法士・ソーシャルワーカー等がチームとなって援助されています。

 

 

 

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