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受講生の実習報告

 

ホスピスを身近に感じて

 

JR札幌鉄道病院

桜井 環

 

はじめに

 

私は、実習を通して、ホスピスとはどういうものか雰囲気を感じ、実際自分が働くとしたらどのような関わりが必要なのか考えてみたいという思いがあったが、聖マリアホスピスでは、それだけでなく多くのことを感じ、学ぶことができた。

2週間の短い時間の中で、私がマリアホスピスから学んだ大切なこと1]チームアプローチの実際、2]心のケアを中心に報告する。

 

チームアプローチの実際

 

私は2週の間で、様々なホスピススタッフの方からお話を聞くことができた。最初に強く感じたのは、全員が患者、家族のためにできることを全力で取り組んでいるということであった。どのチームメンバーの方も患者の希望に近づけるために行っていることに対して、“これでは十分じゃない、まだ何かできるかもしれない”と思いながら働いており、私の中でとても印象に残っている。カンファレンスの時間を大切にされており、各々がたとえ異なる見解だとしても、常に自分たちの意見を伝え合い、ギャップが生じていることも話し合われていた。

私は、正確な知識、観察、分析、そしてその分析を冷静に振り返る能力と、さらに問題提起できるような意見をもつことが、とても必要とされていることを改めて感じた。これは自分自身の当面の課題でもあるが、今後、患者に反映できるチームアプローチをもつために、私の病院でもチームカンファレンスができたらと考えている。

マリアホスピスでは、ホスピス入院で3点守っていることがある。それは、1.本人が病気を理解していること、2.本人あるいは家族が入院を希望していること、3.嘘のないお付き合いであるが、必ずしも完全に満たしていなくても、その後のスタッフの関わりでクリアできるということを知った。私はここでも、チームアプローチの素晴らしさや大切さを感じた。

 

心のケア

 

1) 外来ホスピス

マリアホスピスの外来は、必ず医師、婦長が入り、患者の経過がよくわかり、患者はいつも安心して通えるといった雰囲気であった。その中で私が感じたことは、患者はホスピス外来に初めてかかるまでに様々な感情を抱いており、身体だけでなく心が本当に病んでいるということであった。患者が、迷い、不安、治癒への希望、後悔など、複雑な気持ちを落ち着かせて現状認識できるまでの関わりは、医療者として本当に難しく、時間を要すると感じた。また私たちは、告知されていても、患者本人がどこまで知ろうとしているのか、これからどうして生きたいのかという気持ちを理解することがとても大切であると実感した。

 

2) 患者との関わり

短い実習ではあったが、私は自分なりに、患者がホスピスをどう捉えているのか、どんな気持ちでいるのか知ることができたと思う。ある患者は「ホスピスには最期まで自然な姿でいたい人が入るんでしょう」と、とても冷静に自分にいいきかせていた。しかし「いろいろなこと考えてしまうんですけど」とも話しており、複雑な思いを感じた。

 

 

 

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