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ポリクロミー Polychromy

この曲のタイトル、Polychromyは、多色装飾、多色彩色といった意味であるが、その多色性を得るために、オーケストラを2つのソリスト・グループ、4つのオーケストラ・グループとパーカッションに分割した。それにより、各グループは各々独自の音色を作り出し、グループ間における多様な音色の堆積や、応唱(レポン)、音像移動などを実現しようとした。また、テクスチュアも各セクションごとに変化することで、単一でない、多層的なテクスチュアを得ようと考えた。この曲は、98年2月に完成した。

 

マチェイ・ズウトフスキ(ポーランド)

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1971年5月27日ワルシャワ生まれ。ショパン音楽アカデミーにて作曲と指揮を学び、96年より同アカデミーで作曲科の助手を務める。ポーランドの文化省より奨学金を2回得る。97年ドイツへ留学。94〜96年ポーランド作曲家同盟青年部議長をつとめた。

 

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管弦楽のための4つの小品 Four Pieces for Orchestra

《管弦楽のための4つの小品》(Cztery utwory naorkiestre)は、私がワルシャワのショパン音楽院の学生だった時に作曲された作品です。各1本ずつの木管楽器、小編成の金管、ハープ、弦楽器そしてたくさんの打楽器からなる小さなオーケストラのための作品で、4つの小品は、それぞれ違った5音音階が用いられていますが、それぞれは前の曲から何らかの名残を引き継いでいます。4つの曲は、全く別の世界のようですが、第2曲は第1曲を内包し、第3曲は、しっかりしたポスト・ウェーベルン様式と前の2つの曲が組み合わされたもので、第4曲は、ある数学的で統計学的な法則に則ってすべての世界(全曲)につながっています。第1曲と第4曲は、かなり異なったインスピレーションの痕跡を持っています。最初の曲は、モンゴルの大平原で見捨てられているいわゆる"名もない石"を描写し、最後の曲は、インド音楽のリズム理論に基づく韻律に模したサイクルを用いています。最後の音"H"は、全曲を通してどこにも使われてはいないもので、最後の最後に響きます。

 

前田克治(日本)

Katsuji Maeda, Japan

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1970年12月21日生まれ。95年大阪音楽大学大学院修了。秋吉台国際作曲賞において山口県知事賞(97年)、奨学生賞(95年)受賞。他、受賞多数。95年現代音楽協会作曲新人賞入選。クラング・フォーラム・ウィーン国際作曲コンクールに入選し、98年度ワークショップに招待される。

 

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絶え間ない歌〜オーケストラのための Uninterrupted Song-for orchestra

ただ、見えているものを写し取ることは無意味である(時に、危険ですらある)。寧ろそれを遠ざけ、如何にして見えざるものを見、聴かざるものを聴くか。私は今、オーケストラにいくつかの仕掛けをし、様々な「ずれ」や「隙間」を生じさせることによって、まさに本質的な事象の内部に分け入ろうとする。

例えば、適当(ランダム)に調弦されたヴァイオリン。最早や、正確な音高で演奏したり、美しい重合を奏でることが出来ないばかりか、弦の振動や、楽器本来の豊潤で自然な共鳴をも奪うことになるだろう。しかし、傷を負うことにより初めて、否応なく、隠蔽されていた剥き出しの「生」に向き直らされる。必要なのは、自らを犠牲と共に肯定的に受け入れたうえで、それを乗り越えようとする「意志の力」を獲得することだ。奏者は研ぎ澄まされた想像力と、この意志の力によって、音を、楽器を、そして自己を再構築していくと共に、また、純化させていく(これは矛盾ではない)。私たちは、その一見茫羊とした地平に、新たな秩序の生成を見、組織化の過程に参加することだろう。――やがてそれは、次第にあるひとつの『歌』へと収斂されていく。

 

 

 

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