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伊東乾(日本)

Ken Ito, Japan

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1965年1月27日生まれ。松村禎三、松平頼則、近藤譲、高橋悠治、ノーノ、リゲティ、ブーレーズらに作曲を師事。井上道義、バーンスタインらに指揮を学ぶ。東京大学理学部物理学科卒業。同大学院修了。第1回出光音楽賞受賞。すでに多数の委嘱を受け、作曲活動を行う。

 

PROGRAMME NOTE

ダイナモルフィア DINAMORPHIA

「流体力学」という仮の名で動的に流動する音の可能性を考え始めたのは1978年、中学生の頃でした。例えば波の運動、あるいは水の振る舞いのような、内なる無定型の音楽衝動にいかなる形が与えられるものか。「動的無定型」dynamicとamorphの二語を組み合わせたタイトルで一つの音楽を強く予感したものの、当時は具体的な形を与える方策が見つけられませんでした。その後も断続したこの作品に大きなヒントと転機を与えたのは93年、ジェルジ・リゲティ氏と交わした長い議論です。以後、視覚と聴覚の認知科学を勉強し、NTT基礎研究所(当時)のご協力でいくつかのプロジェクトを持つ過程で、哲学でいえばパトリシア・チャーチランドのニューロ・フィロソフィーに対応する脳と知覚世界の唯物的な描像を音楽思考のシステムとして翻案可能なことに気づきました(詳細は博士論文参照)。この音楽では複数の響きのシステムが互いにずれ、非線形に相関しながら、身体を取りまく環境、実空間を「分凝」「補間」「音脈形成」といった聴覚的錯覚の形で横切ります。97年の7月、知床半島の「湯の滝」を歩いて遡行しながら、私にとっては古いこの「動的無定型」の音楽を、新たな形で定着し直せる、音楽の一つの倫理的な視座に確信を得て、翌年3月に脱稿しました。総譜は一柳慧氏に感謝を込めて献呈されています。

 

東千嗣夫(日本)

Chishio Azuma, Japan

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1969年2月11日生まれ。92年東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。作曲を浦田健次郎、丸田昭三、松村禎三の各氏に師事。94年現代音楽協会作曲新人賞入選、95年第2回福井ハープ音楽コンクール入選。

 

PROGRAMME NOTE

カッサシオン CASSATION

1996年に作曲された《カッサシオン》では、モーツァルトのセレナーデやディヴェルティメントの形態が導入された。二管編成のオーケストラにより、室内楽的、あるいは独奏楽器による協奏曲的な試みがなされている。第二楽章ではホルンを除く金管楽器、第四楽章でさらに打楽器が省かれ、第五楽章ではトリオの独奏群以外の弦楽器が省かれている。2つのメヌエット楽章のトリオでは、弦楽の独奏群が、モーツァルトのK.601やK.602に使用されるハーディガーディの響きを模している。

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渡辺俊哉(日本)

Toshiya Watanabe, Japan

 

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1974年3月15日東京生まれ。94年東京芸術大学音楽学部作曲科入学。98年3月同大学卒業。97年、学内において安宅賞を受賞。現在、同大学大学院修士課程に在籍中。

 

 

 

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