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第4章 内航海運の課題

1. 内航海運の現状分析(調査結果のまとめ)

国内輸送の重要な手段としての内航海運には「良質な輸送サービスの安定的かつ効率的な提供」という使命がある。しかし、この使命を達成するにあたって、内航海運の現状を見ると、さまざまな問題点がある。

昭和39年の内航二法制定時に、内航海運問題懇談会が運輸大臣へ提出した意見書は、内航海運が輸送部門の大動脈として国民経済上重要な地位を占めているにもかかわらず極めて憂うべき状態にあるとして次のように述べている。すなわち、「内航海運業者は外航海運と異なり、そのほとんどが零細な中小事業者であり、しかも長年にわたる船腹の過剰傾向、業者の乱立による過当競争等が原因となって運賃市況が極度に低迷しており、そのため欠損を重ね、償却不足が累積している結果、その近代化、合理化のための資本の蓄積を著しく欠いている」としている。これ以降、現在までの30数年間に内航海運の事業者数はほぼ半減したものの業界の現状は昭和39年当時とそれほど大きくは変わっていないといえる。

内航海運がその使命を達成するためには、業界としての近代化、合理化を進めるとともに個々の事業者が資本の蓄積を進めることができるような経営基盤の強化が必要である(図4-1.)。

 

図4-1. 内航海運の使命とその達成の必要条件

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内航海運事業者が経営基盤強化を進めるうえで克服すべき問題点は多い。表4-1.は問題点とそれが生じる原因を整理したものである。

内航海運の持つ特性(供給量調整が困難、輸送サービスの在庫は不可能,投資額の大きい船舶を使用するため業界からの撤退が困難、等)及び近年の貨物輸送需要の量的・質的変化により船腹過剰が生じ、これが契約における荷主優位性や家族船員等の活用による低コスト運航者の存在等と合わさって運賃低下と収益性の低下をまねいている。加えて、船腹建造時の巨額の借入金と少ない資本蓄積が過小な自己資本比率となり、収益性の低下とあいまって経営基盤のぜい弱性をもたらしている。この構図は図4-2.に示すとおりである。

 

 

 

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