2) 内航海運暫定措置事業の内容とその評価
1] 暫定措置事業の概要
平成10年は内航海運業界始まって以来の大変革の年となった。昭和42年12月の「保有船腹調整事業規程」の認可以来、約30年にわたって実施されてきたスクラップ・アンド・ビルドを基調とする船腹調整事業が解消され、その代替事業として「内航海運暫定措置事業」が導入された。
これまでの船腹調整事業についてはさまざまな批判もあったが、景気動向への敏速な対応が困難な船舶という輸送手段を使用する事業にもかかわらず、内航海運がほぼ順調に安定輸送を確保できたのは当事業によるところが大きいといえよう。そのため、船腹調整事業の廃止に対して内航海運業界は強く反発し、一時は同事業の廃止は先送りされた。しかし、需給調整廃止への潮流は強まる一方であり、内航海運の船腹調整事業についても早急な解消が避けられない状況となった。そして最終的には、内航海運業界も船腹調整事業から暫定措置事業への移行を受け入れた。
内航海運暫定措置事業の概要を図3-3.と表3-2.に示す。
スキームの概要
1] 内航総連は、既存の自己所有船を解撤等する転廃業者等に対して交付金を交付
2] 交付金の交付のために必要な資金は、内航総連が金融機関等から調達
3] 船舶建造者は、新造船の重量トン数等に応じて、内航総連に納付金を納付
(納付金の一部に代えて、既存の自己所有船をスクラップすることも可)
4] 内航総連は、船舶建造者が納付する納付金によって金融機関等からの借入金を返済