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1] 内航海運業法の概要

ア. 適正船腹量の設定

法第2条の2において、船腹過剰を回避するために今後5年間の適正船腹量を予測し、定めることとしている。ここで定めた適正船腹量は、過大な船腹保有を抑制するとともに、運輸大臣が船腹量の最高限度を設定するに当たっての判断基準となっている。運輸大臣が毎年度各船種ごとに海運造船合理化審議会の意見を聴いて当該年度以降5年間の各年度の適正船腹量を策定し、告示している。

 

イ. 最高限度量の設定

適正船腹量を定めても、景気変動等により大幅な船腹過剰が生じることがある。このため運輸大臣は適正船腹量に照らして著しく過大な船腹供給となる恐れがあると認められるときは、海運造船合理化審議会の意見を聴いて、1年以内の期限を定めて船種別の船腹量の最高限度を設定することができる(法第2条の3)。

最高限度量が設定されている間は、その船種については船腹量が最高限度量を超えることになる許認可をしてはならないとされている。最高限度量の設定は強い強制力をもっているため、極端な船腹過剰に陥る恐れがあるという憂慮すべき状態になっているときに限られており、これまで1964〜69年、1983〜86年の2度、1年ごとに設定されただけである。

 

ウ. 事業の許可

内航海運を営もうとする者は、その使用船舶の規模に応じて運輸大臣の許可または運輸大臣への届出が必要である(法第3条)。許可が必要な者は、総トン数100トン以上もしくは長さ30メートル以上の船舶による内航運送業または内航船舶貸渡業を営もうとする者である。届出を必要とする者は、総トン数100トン未満でかつ長さ30メートル未満の船舶による内航運送業または内航船舶貸渡業を営もうとする者である。許可の審査基準は、需要との適合性(供給関係の安定度)、基準船腹量(適正な事業規模)、適正な計画(船員配乗など事業の計画性)、事業遂行能力(資金計画など)となっている。

 

エ. 標準運賃・貸渡料の設定

内航海運は「自由運賃制」であり、金額は荷主と内航運送を行う者との交渉で決まる。しかし、取引関係において荷主優位性が強いこと、業者間の過当競争が生じやすいことなどから適正な運賃・貸渡料の実現が困難な場合が多い。そこで、内航海運業法では運輸大臣が航路、貨物を指定して標準運賃・貸渡料を設定・公示することができるとしている(法第16条及び第19条)。この標準運賃は1966年に設定されたが、75年に廃止されており、制度としては残っているが、その後は設定されていない。

 

 

 

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