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2] 個人事業者の事例(ヒアリング結果)

 

<事業者の特性>

・所在地…兵庫県三原郡

・所有船舶…3隻

・所属組合…なし

 

ア. 最近の景況について

40年間、内航海運(貸渡業)を続けてきたが、これほど景気がわるいのははじめてだ。ここ2、3年で急激にわるくなった。

平成5、6年に貨物船(199トン)、曳船、バージを建造したが、その時の借金が4億5千万円も残っている。

 

イ. 事業継続について

海運業界からはすぐにでも撤退したいが、借金が多すぎてやめられない。暫定事業の交付金額では借金が返せない。

内航海運以外に陸上で加工業や不動産業などの事業を行っている。こちらのほうは利益が出ているが、内航海運事業は赤字である。陸上事業だけに絞りたいが、今の状況ではむずかしい。内航事業のコスト削減等は、もうこれ以上不可能である。用船料がこれほど低くては、何の手も打てない。

 

ウ. 集約化・協業化について

アンケートでは「積極的に進めたい」と回答したが、それは「荷主やオペレータのよびかけがあれば」という前提である。協業して船を係船すると、収入が減り赤字がますます増える。一杯船主は集約するよりも売船して内航事業から撤退するほうがよいと思う。事業者が売船しやすいように(借金が残らないように)、行政が支援してほしい。

 

エ. 内航業界の将来について

私のように息子がいて、陸上でも一応利益の出ている事業を行っている者はよいが、内航専業者は内航から身を引くと食べていけない。そのため、赤字でも事業を続けなければならない。荷主やオペレーターは、このようなオーナーの状況を利用するかたちで、安い運賃、用船料を提示するためオーナーの経営内容が悪化する。何とか事業を続けることのできる事業者は集約して、それ以外の一杯船主は海運から撤退すべきであろう。そうなれば、運賃、用船料も一定の水準に保たれ、業界も安定するだろう。集約と撤退を円滑に進めるための行政の支援が必要である。

 

 

 

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