(3) 明石海峡大橋開通による観光分野への影響と今後の見通し
II章、III章のデータによりながら、明石海峡大橋開通による観光分野への影響をまとめるとともに、そこから読みとれる趨勢的な今後の見通しについて整理を行う。
1] 観光分野への影響
a) 淡路島、徳島県、香川県等への観光客の変化
観光入込数を、明石海峡大橋の開通前後である平成9年度と10年度とで比較すると、淡路島、徳島県、香川県において増加している。特に、淡路島と徳島県における入込数の増加が顕著となっている。
b) 京阪神からの日帰り観光圏の拡大
京阪神から淡路島・徳島県への観光は、交通利便性が向上したため、日帰り観光が容易となった。例えば、旅行事業者へのヒアリングによれば、徳島における阿波踊りへの観光旅行は、明石海峡大橋開通前は宿泊を伴っていたが、開通後は日帰りで利用する人が増えてきている。
同様に、淡路島・四国(特に徳島県)在住者にとっても、京阪神方面への日帰り観光も容易となった。また、ヒアリングによれば、観光地における滞在時間を長時間とることができるなど、日帰り観光の質が充実してきている。
c) 観光地としての淡路島の魅力
淡路島への観光入込数の増加とともに、観光地自体としての魅力も向上している。
旅行事業者へのヒアリングによれば、京阪神在住者にとって、淡路島の観光商品のレベルが向上したとの指摘があった。具体的には、明石海峡大橋の開通後は、淡路島が京都や奈良、有馬、北陸等に準ずる人気商品として扱われるようになった。
d) 明石海峡大橋自体を目的とした観光ブームの沈静化
瀬戸大橋と比べると、明石海峡大橋自体の観光ブーム期間は、瀬戸大橋の場合と比べて短かかったようである。
旅行事業者へのヒアリングによれば、瀬戸大橋の開通時には、瀬戸大橋自体を観光目的とした観光が3年は継続し、4年目から観光客数が減少したという。一方・明石海峡大橋の場合は、開通した年の冬から観光客数が減少しはじめたと旅行代理店は指摘する。今回のアンケート結果によれば、高速バスを利用した観光者のうち4割は明石海峡大橋そのものを目的とする観光ではないと回答しており、この指摘を裏付けているものと考えられる。