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燃料電池の潜在的なアプリケーション

 

燃料電池は宇宙飛行士に電力と飲料水を供給するために宇宙計画の中で開発・利用されてきた。地上の応用機器は運輸、固定あるいは携帯の電力使用の範疇に分類することができる。

ポリマー電解質膜燃料電池は、燃料から高いレベルの効率と出力密度で継続したエネルギーを供給するために、運輸部門によく適合する。それらはまた、燃料電池システムの中の出力発生スタックに、可動部品がないため最小限の保守で済むという長所がある。

発電部門は、燃料電池が広く商業化されるであろう初期の舞台として期待されている。発電所の低いエネルギー効率のために、今日消費されているエネルギーのわずか3分の1だけしか実際のユーザーの元に届いていない。事実、米国の化石および原子力発電所は21quadsの熱を大気に放出しており、この量は国内のすべての家庭およびビルが1年間に消費している熱よりさらに多い量である。発電機器に燃料電池を使用すれば環境への排出を減らしながら、60%近いエネルギー効率の改善が可能である。リン酸型燃料電池は、定置式燃料電池システムの初期の商業化によって一般に利用されるようになった。これらの環境にやさしいシステムは簡単で信頼性が高く、また騒音が少ないものである。これらは最小限の手間と注意しか必要ない。天然ガスが優先的な燃料だが、地域のゴミからのガスやプロパン、あるいは多くのメタンを含む燃料のような他の燃料も使用可能である。そのような燃料のすべては、燃料電池スタックに供給される前に水素の豊富な混合ガスへと改質される。各200kWの能力を持つ、200台以上の機器(リン酸型燃料電池)が現在世界中で稼動している。燃料電池メーカーは、より安価な原料および生産コストの可能性がこれらのシステムを商業べースに乗せることを可能にしているため、2-5kWの電力レベルの家庭用発電機や暖房器具のための小規模なポリマー電解質燃料電池の開発を現在進めている。より規模の大きい燃料電池発電所と同様、より小規模のシステムもまた電線網ではなく天然ガス・パイプラインに直接接続される。これら小規模の利用に加えて、ポリマー電解質燃料電池の技術はまた、大規模なビル用途に開発を進めている。

「分散型発電」は電力会社が取り入れ始めた新しい試みである。これは、需要がある地域により近い場所に小規模でエネルギー節約型の発電機を設置するというものである。燃料電池は設計の際の基本単位であり効率が高いため、小型機器を現場に設置することができる。発電所計画者にとって資金面のリスクが小さく、需要が増えるにしたがい、機器を追加することができる。発電システムは現在、再生燃料電池技術と再生可能電力源を利用するように設計されている。

 

 

 

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