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燃料電池と内燃機関およびバッテリーとの比較

 

内燃機関、バッテリーおよび燃料電池が共通して持っているものは、その目的である:これらすべてはあるエネルギーを他のエネルギーに転換する装置である。初めに、今日米国の高速道路を走行している、事実上すべての自動車に動力を与えるために利用されている内燃エンジンについて考えてみたい。これらのエンジンは、空気中からの酸素と燃料を燃やすことにより、化学エネルギーの放出から生じる騒音を伴う高温の爆発により走行する。内燃エンジンは従来の発電所と同様、機械的エネルギーを得るために(発電所の場合は電気エネルギー)、燃料の持つ化学エネルギーを熱エネルギーに転換する。燃料電池とバッテリーは電気化学的装置であり、その性質そのものから、より効率的な転換プロセスを持っている:化学エネルギーは直接電気エネルギーに転換される。内燃エンジンはカルノー・サイクルにより制限される、熱の機械的エネルギーへの転換が含まれるため効率が悪い。

自動車が水素燃料電池から直接得られた電気を動力とする場合、燃焼は一切伴わない。自動車燃料電池の場合、水素と酸素は直接電気エネルギーを生産する比較的低温の電気化学反応を伴う。この電気は自動車の車輪に動力を与えるために使われる、車軸に連結したひとつ、あるいは複数のモーターにより使用される。直接的水素燃料電池自動車はアイドリング中でさえも排出ガスがゼロである。このことは都市のラッシュアワーの際に特に重要である。しかしながら内燃との類似性もいくつか存在する。燃料タンクは依然として必要であり、酸素は相変わらず空気中から供給される。

すべての電気自動車(EVS)はバッテリーを動力源としていると、多くの人が誤解している。実際には電気自動車は車載バッテリーか燃料電池のいずれかを動力源とする電気駆動輪を持つ自動車である。バッテリーと燃料電池は、これら両方が化学エネルギーを非常に効率的に電気に変え、運動部品を持たないため、最小限のメンテナンスですむという点で類似している。しかしながら、燃料電池と異なり、バッテリーの中の反応物は内部に貯蔵され、使用の際にはバッテリーは充電するか交換する必要がある。バッテリーを出力とする電気自動車では充電可能なバッテリーが使用されている。

燃料電池を動力とする電気自動車については、燃料は自動車の燃料タンクの中に貯蔵され、空気は大気中から取り入れる。自動車のタンクに燃料がある限り、燃料電池は電気と熱の形でエネルギーを生産するだろう。バッテリーか燃料電池かという電気化学的装置の選択はその使い方による。大規模に使用する場合には燃料電池はより小型、より軽量、急速補給、およびより長距離の走行範囲等を含む、バッテリーより優れたいくつかの長所を持っている。

 

 

 

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