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第3章 ジメチルエーテル(DME)燃料に関する技術動向調査

 

世界的にエネルギー需要の増大や環境問題(CO2、SOx、NOxなど)が大きな課題となっているなか、石油に代わるクリーンなエネルギーとしての天然ガスの利用が高まると予想される。しかし、天然ガスは気体であるため取り扱いや運搬が容易でない。輸送手段としてはパイプラインやLNGタンカー輸送が主であり、いずれも経済性・設備規模・輸送距離などの問題から実際に利用するには障壁がある。そこで天然ガスを輸送しやすい液体燃料に変換する技術開発が盛んになっている。例えば、メタノール合成、ジメチルエーテル(DME)合成等がある。DMEは現在、メタノールの脱水反応で製造されており高価だが、天然ガスからの直接合成法が開発され、製造コストが従来より安価になってきた。DMEはクリーンな燃料であり、セタン価が高いことから、ディーゼルエンジンに使用可能であるため、ディーゼルエンジンの低公害化のために期待されている。さらにDMEは、液化石油ガス(LPG)と類似の性質を持つのでLPGと同等の輸送、貯蔵、取り扱い等が可能であり、LNGと同等の経済性があれば燃料としての用途が期待される。

 

3.1 DMEとは

 

DMEは分子量46.07、分子式CH3OCH3で表される最も炭素数の少ないエーテルで、かすかな甘味臭がある。凝固点-138.5℃で、溶解度は18℃で1容の水に気体で37容溶け、エタノールには易溶である。反応性では低温でハロゲン、ハロゲン化水素などと付加化合物を形成する。

DMEの燃料としての物性は表3-1-1に示すように、プロパンと沸点が近く、20℃約5気圧で液化し、常温加圧容器輸送が可能で貯蔵、取り扱いはLPGの技術が応用でき、既存のLPG船や LPG設備の小規模な改造で導入が可能となる。液体での容積当たりの低発熱量はLNG、プロパンより少し低いがメタノールよりは高い。爆発限界はLNG、プロパンより広いがメタノールよりは狭い。ディーゼルエンジンの着火性又は始動性の指標であるセタン価は軽油と同等で非常に高く、既存のディーゼルエンジンに燃料噴射系材料などの軽微な変更をすれば利用できる。

DMEの生体に対する影響は表3-1-2に示すようにLPG並みで極めて低毒性であり、「エーテル」と通称されているジエチルエーテル(DEE)と異なり、麻酔性はごく弱く、LPGと同程度である。DMEは高圧ガスかつ可燃性ガスが適応され、有害性として7.5%のような高濃度暴露において、軽い不快感がおこるが外観的変化はない。また、皮膚を侵すことは少ないが、液化ガスが皮膚にふれると、炎症や凍傷を起こすことがある。更に気体状態のDMEの眼・皮膚への刺激性及び感作性は極めて少ない。いずれもLPGと同等の取り扱いで対応できる。なお、金属は腐食されないが、ゴムは腐食されるものがある。

 

 

 

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