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これら2国間INCSEA協定(あるいはおそらく、2国間協定に代わるものはまだ現れていない)を補完するために、北東アジア、東南アジア、バルト海、黒海そして、おそらくインド洋のためのINCSEAあるいは、海上における安全のための多国間サブ地域協定が真剣に検討されるべきである(*12)。そのような多国間協定は、バルト海及び黒海の各グループまで含めた各地域グループにおける海軍の専門家会議で協議されることになろう。

太平洋ではCSCAP海洋協力作業グループがASEAN地域フォーラムのために、この地域におけるイニシアティブをいかに準備するか確認するための適当なフォーラムである。このような多国間協定は洋上における海軍部隊に相互に通信を行ない、危険な行動や威嚇を避けることを要求するという、この時間を経て試されてきた2国間協定の規定を採りこむこととなろう。

しかし、これらの協定は、監視、漁業、商船の安全(捜索救難)及び/または海賊対策/麻薬対策協力といった地域特有の非軍事的な海洋問題を呼びかけるために、特別に制定(又は、別の協定で補完)することができるであろう(*13)。それらの協定の中には、毎年のサブ地域レビュー会議/上級士官による海軍シンポジウムの規定が盛り込まれるべきであり、これらの会議は同時に、現行の(2国間)INCSEA協定において、極めて有益かつ永続性のあることが証明された2国海軍間の接触と討議のための場所をも提供することとなる。

多国間サブ地域INCSEA/海上における安全の体制が、野心的すぎるとして否認される前に、他の諸国が最近の成功の経験をそのまま紛争の絶えない中東地域にさえ持ち込むことを望むかも知れない。特にアジア太平洋地域は、このような協定を優先すべき海上におけるCBMsと見なすべきである。しかしながらINCSEA協定だけでは、もともと潜没している潜水艦の問題あるいは領海(及びEE)の境界線に関する海洋法上の争いの問題を十分にカバーできないということを認識することは重要なことである。

2国間行動と多国間行動の柔軟な組み合わせが、より困難な多国間行動での海上における事故原因を局限するために必要である。そのような行動には(海洋法の下で)合意された領海及びEEZ境界線についての解釈に関する2国間/多国間協議、係争中の境界線付近に進出して行なう海軍作戦についての慎重な配慮、係争中の境界へ進入あるいは横断する艦艇、航空機に対する合意に基づく緊急通信手順(1989年米ソDMA協定のようなもの)、そしてあるいは差し迫った危険と認識される極端な状況における潜水艦水中通信に関する規定まで含まれることになろう。

 

 

 

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