原油価格水準をセーブすることが日本の国益なんですというはっきりした立場に立たないとだめです。そう腹をくくれば、「ただでも貸してやったらいいじゃないか」と言える。中国に対して「そんな高い価格で買わなくてもすみますよ」と助言できる。要するに東西の価格差の問題と世界の原油価格水準という問題があって、アメリカは半分自国で生産していますけれども、日本はほとんど輸入ですから、これの影響が甚大です。原油価格水準をセーブすることが日本の国益だという視点に立たないと、得か損かでやっていては、とてもじゃないけれどもできない。私も中国にいろいろな製品を売ったりしたこともありますけれども、一緒にやろうというと、なかなか性格的なこともあって難しい。
42:東西の価格差は簡単な話
加藤 なぜ、そういう価格差が生じるんですかね。やはりクオリティとか...。
曽我 東西の価格差は簡単な話なんです。せっかくですから、ご説明しますと、ここにヨーロッパがあります、アジアがあります。ここが中東、サウジです。
サウジのアラビアンライトは例えば軽油で1.2%のサルファーです。こっちの北海原油は軽油で0.2%です。ここにあるのは重油が0.5%のサルファーです。3.0%はアラブライト。そして、ブレントの価格がありますね。「クオリティ・ディスカウント1ドルして下さい」と言うわけです。当然ですね。さらに「ここから運ぶのに1ドルかかりますから、もう1ドル引いてください」といわれる。だから「ブレントマイナス2ドル」というのが、ここの積み出し価格になる。ドバイのリンクで買うわけです。ここはだいたい「ドバイプラス1ドル」ぐらいのブレントになりますけれども、ほとんどアラブライトと同じ性状ですから、こうなるわけです。そうするとドバイのプライスそのものになる。ところがノルウェーやなにかがどんどん生産してくると、ここはジャブジャブになる。そうすると、こんなに質のいいブレントとドバイが同じ価格になったり、あるいは逆転することがある。例えば同じ価格になったとしますね。そうすると、こちらに出しているのが「ブレントマイナス2ドル」で、こちらがドバイですが、これが同じ価格になる。そうすると2ドル格差が出ちゃう。ですから基本は原油開発技術力なんです。
高瀬 そこの場所で供給できるように、代替物があるかということですね。
曽我 私の構想では、これを2ドルというのはひどいじゃないか、1ドルぐらいにならないかということから始まります。全世界から1ドルでもってきたら、「ブレントプラス1ドル」でここは持ってこられる。そうすると「ブレントプラス1ドル」のところから、今度はクオリティベースで1ドル、運賃で1ドルですから、そうすると「ブレントマイナス1ドル」になる。そうすると「ブレントマイナス2ドル」と、「ブレントマイナス1ドル」で、1ドルしか差がつかないじゃないか。
それで、オックスフォードのフォースネル教授にこんな話をしたら、「それは理論的にはそうだ。しかし、その時の世界の原油バランスは、アメリカも含めてどういうふうになるのかを計算したほうがいいんじゃないか」と言われた。100万B/Dもっていけばインパクトがあるのか、200万B/Dを持っていかなければインパクトがないのかですね。むこうも製油所設備はありませんから、こんなにたくさんは中東原油処理できないわけです。