これらのそれぞれの成分は各層の繊維質が網目状になり、さらに各層の中の網目は幾重にも重なって立体的に絡まって作用し、抗力として働いているものと考えられる。
ii) 3次元的考察と実験データ整理のための提案
網目状繊維の立体的な絡まりが抗力に関連しているものと考えられるので、各層の厚さHiと、各層毎の単位厚さ当たりの抗力ri、および立体係数Kを用いて、下記のようにデータを整理することを提案する。(図4-3-4参照)

ここで、Kとrを実験的に求めるものとする。
図4-3-4「網目状抗力」に示すように、実際のくじらの肉にポリウレタンアンカーを打ち込んでから、これを引き抜こうとする時の肉の盛り上がり具合の計測により、周囲の支持条件を考慮して弾性係数等を求めることができよう。
iii) ポリウレタンアンカーの広がりの影響
引き抜き力に影響するのは、これに垂直なアンカーの広がり、すなわち面積の大きさと考えられるが、前述のように繊維網の目の絡まりが抗力の元だと考えると、一概に面積の大きさだけが効いていると考えて良いか疑問である。
すなわち、同じ面積でも繊維の網目の絡まりの大きい形状の方、例えば星状に四方八方に伸びたポリウレタンアンカーの方が効きそうであることは明らかである。
そこで、ここではアンカーの引き抜き力に、垂直なアンカーの最大形状の輪郭線の長さが効いているものと仮定して、今後得られるデータを整理して行くものとする。
iv) ポリウレタンアンカーの厚さの影響
ポリウレタンアンカーは、注入されてから鯨の中で広がって固化するが、固化した時の形状がアンカー力に影響するものと考えられる。つまり、銛の先端部分と柄の部分が硬質してポリウレタン樹脂と一体化することも考えられるが、その時は次の考察の極端な場合として位置づけられる。
ここでは、その形状を銛の先端の全周長:lと、ポリウレタンの厚み:t、およびポリウレタンの剪断強度τ、で決まるとして、次のように表される。
F = τ・t・l -------- (3)
図4-3-5「ポリウレタンアンカーの広がり・厚さの影響」を参照されたい。