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4-3 ポリウレタンアンカー方式の設計と試作

 

4-3-1 ポリウレタンアンカー方式の設計

 

(1) 設計の考え方

本方式は、人間等の生物の体内に埋め込まれている各種の人工臓器等にヒントを得て、ポリウレタンによってアンカーを取れないかと考えたところから出発している。そこで、本方式の開発に取り組む意思のある会員企業を委員会に迎えるとともに、ポリウレタン関係産業界の協力を得て、開発の方向性と可能性を探ってみた。

その結果、2液混合システム(ポリオールプレミックスと変性ポリイソシアネート)の衝突混合方式を用いることにより、急速に固化するアンカーを作ることが可能であると分かり、小型軽量な銛(針状の注入装置)を製作する技術の可能性が出てきた。この構想に基づいて、図4-3-1に示したポリウレタンアンカーのイメージのような構造の銛を最終目標にして、設計概要をとりまとめた。

ここでは、設計の概要と、構想を示すイメージ図を紹介する。なお、設計の概要を図4-3-2「鯨アンカーテスト装置組立図」に示す。さらに、このポリウレタンアンカーの引き抜き力についての一つの考え方について、以下に説明する。

(2) アンカー力についての一考察

くじらにセンサーを内挿、収納した曳航体を装着するためのアンカーを設計する際の参考にするため、アンカー力の構成等、力学的要件についてまず検討してみた。

1) ポリウレタンアンカーとアンカー力の定義

ポリウレタンアンカーは、くじらの脂肪層と筋肉層の間の筋膜付近に形成される硬質発泡ポリウレタンが、引き抜き力に抗することにより生ずるものとし、くじらの表皮に対して垂直方向の引き抜き力をアンカー力と定義する。

2) アンカー力の構成

まず前提として、図4-3-3「抗力の構成」に示すように、脂肪層、筋膜等は盛り上がるように引き上げられる。この時の抗力がくじらの網目状の繊維に働く抗力によるものとして以下考察を加える。

i) 2次元的考察

引き抜き力Fには、表皮の抗力R1、脂肪層の抗力R2、筋膜層の抗力R3、及び筋肉層の抗力R4の合計が釣り合っていると考える。ここでは実際のくじらの筋肉の収縮等による引き抜き抗力は当面無視するが、その大きさが分かった段階で考慮することとする。また、引き抜き力をアンカーに伝達する銛の柄の部分にかかる摩擦力は無視する。

すなわち、次の式によって表現される。

083-1.gif

 

 

 

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