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1-1-2. くじら以外の海産哺乳類

(1) イルカ:ハーネス装着方式

1) VHF方位測定方式

a) アメリカでの研究事例

電波標識を利用してのバイオテレメトリーの実験は、米国海軍水中研究所(Naval Undersea Center)のEvans(1971、1974)らがイルカ類を対象に、ウッズホール海洋研究所(Woods Hole Oceanographic Institute)のSchevill and Vatkins(1966)が中心となって大型鯨類を対象に、それぞれ1960年代に開始された。

Evans(1971)らが開発したイルカ追跡用の電波標識は「背ヒレはめ込み式」で、ナイロンピンで固定するものであった。最初の実験は1968年から1970年にかけて9頭のマイルカに装着し、そのうち6頭で4〜28時間のデータを得ることができた。この装置はその後送信機の改良が進められ、ハーネスを含む長さが30cmまで小型化された。

この改良型標識を用いてネズミイルカ(D.E.Gaskin, G.J.Smith and A.P.Watson ; 1975, A.J.Read and D.E.Gaskin ; 1983)、マダライルカ(W.F.Perrin, W.E.Evans and D.B.Holts ; 1979, S.Leatherwood and D.K.Ljungblad ; 1979,M.D.Scott and P.C.Wussow ; 1983)、バンドウイルカ(A.B.Iswine, R.S.Wells and M.D.Scott ; 1982)、カマイルカ(B.Wursig ; 1982)、シロイルカ(K.J.Frost, L.F.Lowry and R.R.Nelson ; 1985)で追跡実験が行われ、それぞれ成果を得ている。これらの実験の最大追跡時間は20日前後であった。

b) わが国における先行研究事例

わが国での最初のイルカのバイオテレメトリー実験は、相馬らによって1968年9月に伊東市の富戸湾地先で行われた。電波標識はEvansの方式に準じたもので、<図1-6、7>に示すように2本の円筒型容器に封入された送信機(VHF)を背鰭の両側に振り分け2本のボルトで固定する特殊金属ピンを使い、一定時間を経ると装置が脱落するように配慮した。

追跡は方向探知器を装備した船で行ったが、開始後、1時間ほどで受信感度が低下し捕捉不能となった。この結果をふまえ、少なくとも3ヶ月以上の追跡が望まれる動物に対しては「VHF送信機+船舶方探」では、労力、海況等において問題が多く対応しきれないと結論づけている。

2) 人工衛星による自動位置決定方式

a) 東海大学の先行研究事例

人工衛星を利用してデータ収集を図るアルゴスシステムが実用化されたのは1978年であり、これを機会にわが国では1981年農林水産省がイルカの漁業に対する食害対策の一環として、イルカにPTT(人工衛星に向けて送信する端末装置)を装着し、その行動を追跡する実験を開始した。この業務の一部は東海大学と東洋通信機(株)に委託された。

 

 

 

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