3. 観光まちづくりに必要なとりくみ
「観光まちづくり」は、どのように取り組むべきでしょうか?
国内のあるまちでは、まちのシンボル的な建築物が取り壊される危機に瀕したときに、有志が集ってまちなみを守る会を発足させました。その後、この会を母体としたまちづくりが、地域社会等の持続性の確保といった観光まちづくりの取り組みへと発展しています。
また、別の地域では貴重な自然資源の発見等によって、地域のキャパシティを超える来訪者が一時に押し寄せて資源喪失の危機が生じたときに、観光業者、農漁業者などを中心とした観光推進協会を発足させました。協会は、土地の自然・文化・歴史などの資源を傷つけること無く持続させる観光を通じた地域振興を目的として活動を続けています。
このような、これまでの先進的な取り組みや観光まちづくりの考え方を整理すると、「まちづくり気運の醸成」が不可欠な条件であり、その後の活動で「定住環境・資源・来訪者満足度 それぞれの持続性の確保」と「定住環境・資源・来訪者満足度を調和させる仕組みづくり」に重点的に取り組む必要があるといえます。
1) まちづくり気運の醸成
国内外の先進的と考えられる事例を検証してみると、出発点は、「自分たちの地域を少しでも良くしよう」という住民や行政によるまちづくりに向けた取り組みです。こうした取り組みの中で、資源の保全と利活用の調和や来訪者の満足度を高めるための工夫が行われてきたことがわかります。取り組みに当たっては、住民の積極的な参画が重要であり、これを地についた持続性のあるものとすることが重要です。そのため、まちづくりに向けた気運を醸成し、観光まちづくりにあたって、リーダーシップを発揮する主体を確立することが望まれます。
当然、行政の役割は重要ですが、行政に限らずまちづくりのリーダーシップを発揮できる主体の存在が望まれます。また、行政の場合、観光担当としての取り組みではなく、全庁をあげた取り組みとすることが重要です。
2) 定住環境・資源・来訪者満足度 それぞれの持続性の確保
具体的な取り組みとしては、定住環境、資源、来訪者満足度それぞれの側面で、持続性が確保されるように工夫することが重要です。
(定住環境の持続性の確保)
観光まちづくりの重要な目的は、地域の活性化であり、資源を生かした定住環境の整備に注力する必要があります。
経済的な面では、宿泊産業や飲食・土産物など、新たな雇用の場を生み出す観光産業や農業などの関連産業を振興することが重要です。
生活環境の面では、観光客の増大が生活環境の悪化をまねかないように,無闇に騒音を出したり、ごみを捨てたりしないよう観光客に注意を呼びかけたり、観光ルートの整備、ゾーニングなどによる計画的な土地利用の誘導が必要です。