日本財団 図書館


二席

 

観光関連施設入場者の交通手段選択及び交通意識調査分析

 

053-1.gif

岡野英伸

 

1. はじめに

本稿は、都市内にある観光関連施設*1入場者に対する質問票調査をもとにして、観光目的での移動(以下本稿では、観光行動と呼ぶ)において、観客がどのような判断基準・理由で交通手段を選択し、また交通に関してどのような意識を持っているのかについて分析を行なうものである。

観光関連施設の一つである「神戸市立須磨海浜水族園」は、年間100万人以上の入場者を数える、神戸市内でも有数の集客施設である。また同水族園へは、JR、阪急、阪神、山陽、神戸市バス、船など、多様な交通機関を利用して観客が訪れている。車の場合でも、阪神高速道路、第二神明道路、国道2号線を利用して訪れることができる。そして家族連れのみならず、若年・中年・高年カップル、様々な年代のグループ等、多様なライフステージの観客が訪れている。さらに同水族園には、神戸市内だけでなく、大阪・京都・奈良の近畿圏及び中国・四国地方等、広い地域から日帰り観光客および宿泊観光客が、神戸観光の一つとして訪れている。

以上のように、同水族園の入場者数が神戸市内でも有数の多さであること、多様な交通手段・交通機関を利用して来園することができること、同水族園が幅広い年代層・グループを集めていること、広域的な集客力を持った施設であることなどの理由から、須磨海浜水族園という特定の施設ではあるが、観光行動を調査する上で、多様な被調査者から回答を得られ、今後観光行動における交通問題を研究する上での示唆を得られると考えられる。

さらに同水族園は、JR須磨駅から徒歩で20分強、バスを利用しても10分弱かかる*2。山陽電鉄月見山駅からも徒歩で15分弱かかり、公共交通機関からの交通アクセスに関しては、必ずしも有利な場所にあるとは言えない。にもかかわらず、同水族園は現在でも100万人以上の集客力を持っている。したがって、実際に観客は同水族園までの交通アクセスをどのように感じているのかを研究することは、今後公共交通アクセスでは立地上必ずしも有利ではない地域に、新たに集客施設を計画する場合や、交通機関・交通手段別に効率的な宣伝・広告活動を行なう際の示唆を得られると考えられる。

 

*1 観光白書では、博物館・美術館・水族館・動物園などの博物館施設を「観光関連施設」として分類している。

 

*2 バスの運行本数は、平日・土曜日の9時から16時が1時間に4本(15分間隔)、日・祝日は9時から16時まで平均で4.6本(12分から15分間隔)である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION