廣岡裕一
第1章 はじめに
本稿は、オプショナルツアーが旅行者にいかに伝えられているかを調査し、旅行契約の問題、旅行業法上の問題を研究した報告である。
現在、主催旅行のパンフレットには、多くのオプショナルツアーが掲載され、少なからず旅行全体に影響を及ぼしている。しかし、オプショナルツアーに焦点をあてた著作はあまり見当たらない。そこで、オプショナルツアーについて考察してみる必要を感じ、本稿をまとめた。
なお、オプショナルツアーは海外旅行のみにではなく、国内旅行においてもみられるが、本稿では、海外旅行におけるオプショナルツアーについて論じる。
第2章 オプショナルツアーとは
第1節 オプショナルツアーの定義
通常、オプショナルツアーとは、主催旅行や団体手配旅行においてあらかじめ定められた旅行日程の自由行動時間に、その参加旅行者のうちの希望者が、主たる旅行の代金とは別に代金を支払って参加する小旅行をいう。ほとんどの主催旅行のパンフレットにはオプショナルツアーのコースが記載されている。また、団体手配旅行においても団体構成者に対してその案内がなされる場合が多い。
オプショナルツアーは、出発前に参加を募るものと出発後に参加を募るものとがあるが、optionalの語の意味である「随意〔任意〕の」から考えていずれも広い意味でのオプショナルツアーだと考えてもよいだろう*2-1*2-2。
さて、一般的には上述のように捉えられているオプショナルツアーだが、現行の旅行業法や標準旅行業約款には直接的にこの語の定義をした条項はない。ただ、標準旅行業約款主催旅行契約の部(以下「主催旅行約款」という)の特別補償に関する条文の第24条第4項で「別途の旅行代金を収受して当社が実施する主催旅行」という表現があるが、これは主催旅行業者が実施するオプショナルツアーを指しているものといえる*2-3。
*2-1 長谷政弘編著『観光学辞典』1997年同文舘 138頁では、現地で申込みをする旅行を「オプショナル・ツアー」、出発前申込みをするものを「アディショナル・ツアー」というが厳密な区別はなくなっている、としている。
*2-2 表1で検証したパンフレットにおいては、日本で申込みをするものを含めてオプショナルツアーと表示されていた。いずれも、他の表現で示しているものはない。ただし、「L00K JTBパーソナルヨーロッパ(JTBワールド西日本主催)」では、オプショナルツアーや他の表現をすることなく、「街に旅のプラン1泊2日の小旅行」を名付けられたものが記載されている。他の旅行業者の主催旅行にも類似した設定がある。また、「ベスト(日本旅行主催)」では、ウェディングプランや一部の日本申込みの現地小旅行にアディショナルツアーの表現を用いている。
*2-3 三浦雅生著『新・標準旅行業約款解説』1996年トラベルジャーナル 149頁