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一般紙、旅行雑誌、旅行業界誌、テレビ(地上波、ケーブル)等の様々なメディアで、数多くの北海道に関する記事が掲載され、また広告も掲載された。特に、EGは1996年から98年まで一貫して「花のシリーズ」キャンペーンを実施したことが注目される。

また、道観連は、1998年10月のミッション派遣から商取引重視の販売促進に切り替え、台湾の旅行会社との取引成立に貢献した。

 

結論

今までの北海道のデスティネーション・マーケティングの分析により、以下のような結論が導くことができる。

 

◆マーケティング戦略の一貫性とリーダーシップの存在

北海道のデスティネーション・マーケティングでは、どの観光組織も、マーケティングの立ち上げの当初から、北海道と台湾の双方の観光組織を統合した戦略の策定や実践を行なってこなかった。しかし、日本観光協会台湾事務所は、道観連との密接な協力のもと、特に北海道のツアー造成や広報宣伝においてイニシアチブを発揮した。日本アジア航空は国内線乗り継ぎを含む特別割引運賃の導入、エバー航空及び中華航空はチャーター便運航により、アクセスの向上とツアー価格の低減をもたらした。また、日本アジア航空は、4年間一貫したキャンペーンによる北海道のイメージの浸透にも貢献した。結果的に、これらの観光組織は、それぞれの立場においてリーダーシップを発揮しながら、一貫して北海道の四季の大自然の魅力を中心としたマーケティングを実施したのである。

 

◆観光組織の相互協力とコーディネーターの存在

北海道のマーケティングには、北海道側と台湾側の多種多様な観光組織が相互に協力した。日本観光協会台湾事務所は、北海道側セラーへはマーケット情報を提供するとともに、訴えるべき観光魅力を助言し、台湾側バイヤーには、これらの観光魅力を紹介し、デスティネーションとマーケットの情報面での仲介を行った。また、同所は、旅行会社の視察事業、道観連のミッション派遣事業等の活動面でもコーディネートした。デスティネーションとマーケットの双方に精通した日本観光協会台湾事務所の機能が発揮された。

 

◆マーケティング戦略の実施における柔軟性

北海道のデスティネーション・マーケティングでは、北海道内のホテル間の集客競議等による部屋料金の引き下げ、日台航空協議によるチャーター便枠の拡大による直行チャーター便の北海道乗り入れ、台湾ドルに対する円安傾向等、外部環境に影響されるところが多かった。

また、道観連が以前のテーマと異なる「大自然の体験」のキャンペーンを開始したり、日本アジア航空が「花」から「冬のシリーズ」にキャンペーンを切り替えたり、観光組織がそれぞれマーケティング戦略を変えることがあった。

日本観光協会台湾事務所と道観連も、「冬以外」から「冬の北海道」をテーマとし、新しいツアーの商品化に成功した。このようにデスティネーション・マーケティングは、外部環境や他の観光組織の戦略に影響を受けやすいので、需要の喚起に繋がるように柔軟に対応することも必要となる。

 

<謝辞>

本研究にあたっては、北海学園北見大学の東徹助教授、北海道観光連盟の工藤一専務理事、北海道庁経済部観光振興課の近藤崇主査、日本観光協会台湾事務所の上村仁所長、日本アジア航空台北支店の林榮博部長、国際観光振興会の澤田利彦部長並びに鄭然凡職員をはじめ、日本と台湾の多くの方にご指導や情報のご提供をいただいた。この場をお借りして厚くお礼を申し上げたい。

 

 

 

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