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(5) マスコミ報道と災害ボランティア活動円滑化情報の未整備問題

前章でも述べたとおり、ナホトカ号事故の際のマスコミ報道は、被害影響の深刻さを広く国民に伝えることが主目的であり、災害ボランティア活動の円滑な実施を図る上で必要な諸情報を当該活動への参加希望者に対し的確に伝えることなどは特に目的とはしていなかったと思われる。

そのため、マスコミは当該事故による被害影響の深刻さの象徴として、ナホトカ号船首部分が漂着した三国町の模様を繰り返し報道した。災害ボランティア活動参加希望者の実に70%以上が、こうしたマスコミ報道を発起情報源としていたためた、多くのボランティアが広範囲にわたる被災地の中から特に三国町を選び集中するなどの現象をもたらした。

「三国町ボランティア本部」等のボランティア受入れ組織では、こうした現象を解消するため、マスコミ報道によって一個所に集中する傾向にあったボランティアを適所に分散させるなど、災害ボランティア活動の円滑化を図るための交通整理的な機能を担った。

また、ナホトカ号事故の際には、全国各所においてインターネットのホームページによる災害ボランティア活動関連情報の提供が行われていた。こうした活動も、災害ボランティア活動の円滑な実施を側面から支えたものであり、マスコミ情報を発起情報源としたボランティアに対する交通整理的な機能を担っていた。

すなわち、ナホトカ号事故においては、災害ボランティア活動の円滑な実施を支える情報提供機能が不十分であったため、一部、マスコミ報道を発起情報源としたボランティアが特定の地域に集中するなどの現象が起こったが、ボランティア受入れ組織による対応やインターネットによる側面支援協力活動などによって救済されたのである。

このようなマスコミ報道と災害ボランティア活動円滑化情報の未整備問題も、今後の災害ボランティア活動のあり方を考えていく上で、重要な検討課題の一つであるものと思われる。以下に、その解決方法について考察を行ってみた。

1] マスコミへの要請

第一に考えられるのが、マスコミ各社に対し、その報道内容に災害ボランティア活動の円滑な実施を図る上で必要な諸情報を含めることを要請する手法である。

既に述べたとおり、マスコミ報道は、被害影響の深刻さを広く国民に伝えることが主旨であって、災害ボランティア活動の円滑な実施を図る上で必要な諸情報を当該活動への参加希望者に対し的確に伝えることなどは特に目的とはしていなかったものと思われる。

無論、マスコミ報道の本来の主旨を変え、災害ボランティア活動の円滑化を目的とした報道に徹することを要請するのは必ずしも適切とは言えない。そこで、マスコミの本来の主旨に則った報道とは別途、災害ボランティア活動の円滑化に必要な諸情報の伝達を内容とした報道を加えるよう要請するのがこの手法である。

 

 

 

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