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しかしながら、これらの対象者はいずれも地方公共団体の防災担当者であり、緊急時においてボランティア対応を行う者とは基本的に異なる。しかも過去の受講者数は、我が国全体でまだ数十名規模であるという。

一方、災害ボランティア活動に係る一般市民等のボランティアコーディネーターを対象とした当該教育・訓練は行われていないのが現状である。

したがって、油回収技術等に関する専門性を持ったボランティアコーディネーターを育成するためには、海防センター等の専門機関が新たにそれ専用の教育・訓練コースを開設することが必要となる。

こうした中、海防センターでは、一般市民等から特段の要望があった場合にあっては、今後、このような教育・訓練コースを開設する用意があることを示唆している。

ところで、この手法の問題点は1]当該教育・訓練に伴う費用負担は誰が行うのか、2]単発的な教育・訓練が果たしてどこまでの成果をもたらすのか、3]全国のボランティアコーディネーター等に当該教育・訓練が十分に行き届くのか、以上の三点であると思われる。

2] 専門職ボランティアのボランティアコーディネーター化

もう一つの手法として、既に油回収活動そのものに関する「専門職ボランティア」としての要件を満たしている者に対し、ボランティアコーディネートに関する専門的知識・技能等を習得させることも考えられる。

ところで、災害救援活動におけるボランティアコーディネートは、阪神・淡路大震災ほか一連の災害における豊富な活動経験を踏まえ、今やその機能・役割がますます多様化する傾向にある。そのため、災害救援活動におけるボランティアコーディネーターを短期間の教育・訓練によって養成することは難しく、当該活動に関する現場経験を地道に積み重ねることや、平素より福祉分野等におけるボランティアコーディネート業務に携わることが養成に至る必須条件の一つであると考えるべきである。災害ボランティア活動に関するボランティアコーディネ−トに限っても、同じことが言える。

油回収活動そのものに関する「専門職ボランティア」に対し、このような過程を経てボランティアコーディネートに関する知識・経験等を求めるこの手法は、他の手法と比較した場合、現実性に欠けていると言わざるを得ないであろう。

 

 

 

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