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5.3 属性判定等に基づく検討課題の抽出とその解決方法に関する考察

本節では、前節で述べたナホトカ号事故をケーススタディとしたボランティアの属性判定結果等を踏まえ、災害ボランティア活動に関する検討課題を抽出し、その解決方法について考察を行った。

(1) 専門職ボランティアの不在問題

前節では、災害ボランティア活動における「専門職ボランティア」とは、油回収活動そのものに限って言えば、石油類の取り扱いや油回収等に関する専門の知識、技術、経験等を有する者であるとした。

ナホトカ号事故の際にこのようなボランティアの存在がほとんど確認されなかったという事実は、重要な検討課題の一つになるものと思われる。

ところで、人によっては「災害ボランティア活動において、油回収活動に関する専門的な技術・技能等は必要ではない。むしろ、より多くの労務提供を確保することの方が重要である」との見方もあろう。

事実、ナホトカ号事故においてボランティアが回収の対象とした重油は、原油やガソリンなど他の油種と比較した場合、人体への影響及び引火・爆発などの危険性は低く、かつ、海岸漂着時点では揮発性分が失われている状況にあった。しかも、当該活動の主体はマンパワーによる人海戦術であった。

こうしたことなどから、ナホトカ号事故に伴う災害ボランティア活動、特に油回収活動そのものに関しては、特段の技術・技能等は必要ではなかったとも言えよう。

しかしながら、それは偶然の結果であったに過ぎないのではなかろうか。以下に、平成9年7月に東京湾で発生したタンカーによる原油流出事故を例にその理由について説明する。

平成9年7月2日午前10時04分頃、ペルシャ湾から川崎港向け航行中のパナマ船籍のタンカーD号(総トン数14万7,012トン)は、横浜市本牧沖約6kmに位置する中ノ瀬の南西端に底触、貨物タンクに破口を生じ積み荷の原油が海上に流出した。

原油の流出量は、当初、運航者の報告等に基づき、1万4,000から1万5,000kl程度と推察されたが、その後、タンクの損傷状況を精査した結果、海上に流出したと思われていた原油の大部分が空のタンクに移動し船内に残存していたことが判明した。後日、最終的な海上流出量は約1,550klであることが確認された。

 

 

 

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