1 調査の目的
平成9年1月に日本海で発生したナホトカ号事故に係る教訓の一つとして、わが国沿岸域における船舶航行環境に関する情報の不足が指摘された。
わが国沿岸域の海上安全及び海洋環境保全を目的とした調査研究等の実施及び対策検討にあたっては、その目的に応じた船舶の航行環境に関するデータが必要である。
本調査はこのような観点から、わが国沿岸域における外航船舶の航行環境情報に関し、多目的に利用可能な解析手法を確立するとともに、同航行環境情報を、今後の調査研究及び国際的にも理解が得られる資料等の作成にあたっての基礎データとして使用可能な形に、段階的にとりまとめることを目的とする。
2 日本寄港船舶通航状況
2.1 使用データ
現在、わが国には港湾統計等の資料は存在するものの、利用目的が異なるため日本に寄港する船舶の通航状況を把握するための資料としては十分ではない。
そこで、本調査では以下に示す基礎データをLMIS社(Lloyd's MaritimeInformation Service Ltd.)から入手し、それを元にデータベースを作成し解析した。
(LMIS社の概要)
LMIS社は、ロイズ船級協会(Lloyd's Register of Shipping)及びLLP Ltd.*1を親会社として、1986年に設立された。LMIS社は、これら親会社の所有するデータベースを、ニーズに応じて提供している。
2.1.1 基礎データ
基礎データは、「動静データ」、「船舶データ」及び「港データ」の3つのデータから構成されている。
(1) 動静データ
動静データは、世界各国にある1,800のロイズエージェント(LLP Ltd.に密接な関係を持つ代理店組織)から日々報告されたものの中から、下記の調査対象にあわせ抽出したデータである。
調査対象港:日本諸港(図2.1-1(3ページ)参照)
調査対象期間:1997年1月1日〜12月31日に寄港した報告(2.1.2 ?参照)
調査対象船舶:500GT以上の外航船
<データの内容>
・船名(船舶番号)
・寄港地/寄港開始日/寄港終了日
・前寄港地
・次寄港地
*1) ロイズ保険組合の「Lloyd's of London Press」の発行部門がロイズ保険組合と資本を別にして発足した会社で、現在Lloyd's List等の出版物を扱っている。