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植物プランクトンでは、1回の処理で50%近い細胞が消失しており、ミキサーパイプは明らかに殺滅効果を有している。光合成生物である植物プランクトンは、暗黒条件下では生産活動が阻止されて死滅に向かう。今回の実験でも2週間の貯蔵で、多くの細胞が死滅して消滅している。この2週間貯蔵した後の状態を非処理の原水と処理水で比較すると、原水では残存した細胞中約60%が正常な状態であるのに対して、処理水では約20%と少なく、この結果でもミキサーパイプ処理の有効性を示している。さらに、それら貯蔵した海水を処理すると、当然ながら正常な細胞は減少し、特に、処理した海水の再処理のケースでは、正常細胞はまったく残っていない。なお、有殻渦鞭毛藻に関しては、この効果がより顕著に表れている。

つまり、植物プランクトンに対するミキサーパイプ処理の効果は、漲水時あるいは排水時のどちらかの処理でほとんどの細胞を殺滅することが可能であり、漲水・排水の両時期で実施することでほぼ完全な殺滅効果が得られることになる。

動物プランクトンおよび甲殻類に対しても、植物プランクトンと同様の結果であるが、原水を2週間貯蔵した後の処理、つまり、排水時に処理することで完全な殺滅効果が得られており、植物プランクトンに対するよりも高い効果がある。

一方で、外的圧力に耐久性がある有毒プランクトンAlexandrium属のシストおよび大きさが1μm前後と極微小な一般従属栄養細菌に対しては、目立った効果が得られず課題となっている。ただし、処理回数を増やした実験(10循環)では、一般細菌に対して大きな効果が得られていること、および浮遊物質量(SS)をサイズ別に測定した結果で<22μm以下の小さなサイズの粒子を主体にかなりの量が消失している。これらの結果は、構造や方法を改良することで、シストや細菌類に対しても充分な殺滅効果を得ることが可能であることを示唆している。

以上のように、ミキサーパイプ処理は、プランクトンに対しては現研究段階で効果的な方法であることを確認しており、また、他の生物に対しても有効な方法になりうると考えている。

 

4. 今後の方針

今後は、細菌類およびAlexandrium属シスト等の外圧耐久性の高い生物に対しても効果ある方法および実船に適用する際の適切な構造とシステムを検討することを考えている。また、注入混合する気体にオゾン等の他の気体を採用することで、生物殺滅能力を高めることも可能であるし、ミキサーパイプが備え持つ粒子粉砕能力は、例えば、電気化学処理やフィルタリング処理等の前処理技術としても有効であると考えられるので、これら複合技術も対象にした研究開発も視野に入れている。

 

 

 

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