事例研究
黒海におけるAmerican comb jelly(クシクラゲ)による漁場被害
アメリカ大陸東岸を源とした生物、アメリカンクシクラゲ類Mnemniopsis leidyiが、1970年代に、バラスト水を通じて、黒海に侵入したものと信じられている。
クシクラゲ類(クラゲに類似した生物)は、貪欲に動物プランクトン及び魚の卵・幼生を捕食する動物であり、黒海におけるアンチョビー漁業崩壊の主因となっている。
作家Neal Aschersonは、同氏の書籍“Black Sea”(Jonathon Cape,1996)の中で、次のように述べている。
“1980年代後期、主として1987〜1988年の間、科学上これまでに記録されている最もひどい生物学的爆発的増加による荒廃の1つが発生した。Mnemniopsisは、その制御方法が判明していない捕食動物であり、黒海を通じて、突然かつ抑制がきかず広がった。それは、貪欲に若い魚の食用となる動物プランクトン及び魚の幼生を食用としている。アゾフ海においては、Mnemniopsisは、動物プランクトン個体数のほとんどすべてを食い尽くし、1989年及び1991年には、動物プランクトン個体数は通常平均値の1/600にまで落ち込んでいる。黒海及びアゾフ海における半透明クラゲのバイオマスの総計は、7億トンにまで達し、その影響は、完全に破滅的である。この魚類及び魚類供給源への被害と、人類疫病又はイナゴ大群と比較しても記録にない...”
詳細:
日より見主義的移住者及び黒海へのクシクラゲ類Mnemniopsis leidyi侵略問題.
GESAMP報告・研究No.58.
IMO/FAO/UNESCO─IOC/WMO/WHO/IAEA/UN/UNEPによる、海洋環境保護の科学面に関する合同専門家グループ(GESAMP).ISBN 92-801-1436-4
豪州水域における有毒な渦鞭毛藻類及びその他の種
豪州は、年間約6千万トンのバラスト水を受け取っており、1980年代には、異国種に対する問題が持ち上がった。
1990年、豪州は、豪州港に寄港船を対象とした自主ガイドラインを導入した。これは、タスマニア、ビクトリア及びサウスウェールズの海岸線に存在する貝養殖業への現実の脅威に対応した、豪州水域への有毒渦鞭毛藻類侵入に対する特有の懸念から実施したものである。
有毒渦鞭毛藻類は、人間へのまひ性貝毒の原因となることで知られている藻類の1種である。証拠は、有毒渦鞭毛藻類Gymnodinium catenatumが、バラスト水と共に到着した後、豪州水域に根を下ろしたことを示唆している。当該種は、アルゼンチン、日本、メキシコ、ポルトガル、スペイン及びベネズエラ水域並びに地中海諸海港において出現している。Alexandrium tamarenseという種類の有毒渦鞭毛藻類は、広く拡散しており、メルボルン沖水域で定着している。*