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1973年にIMOは、船舶による海洋汚染全般に係る新たな国際条約─海洋汚染防止条約─採択会議を招集した。(この条約及び1978年採択の議定書は、MARPOL73/78として知られている。これは当初、油、化学物質、容器収納状態物質、汚水及び廃棄物に係る5つの附属書から成っていた。1997年に大気汚染に係る附属書が追加された。)

1973年の会議において、特に人類にとって有害な病原体の輸送という文脈の中でバラスト水問題が取り上げられた。会議では、“伝染病バクテリアを含む水域で漲水されたバラスト水は、排出された場合、他国への伝染病拡散の危険を生ずる可能性がある。”ことを銘記した決議が採択された。この決議は、IMO及び世界保健機構に対し、“この問題に関し各国政府が提出したすべての証拠及び提案に基づく調査を開始”するよう要請した。

一方、科学者達は、この問題の評価に取り組んでいた。1976年、ドイツの科学者H. Rosenthal教授は、非土着種のバラスト水を通じた漁場及び水産養殖への移植の危険性とこれに関する知識をレビューした研究論文を発表した。彼は、主要航路近くの近代的養魚場は、バラスト水による病気移動の危険性が高いと結論付けている。

次の10年間で、ますます多くの異国種が持ち込まれ、世界中で注目された。1980年代後半に、カナダ及び豪州が、好ましくない種に関する特別の経験を持つ国となり、両国は、IMOの海洋環境保護委員会(MEPC)の対応に関心を持つようになった。

 

1991年バラスト水ガイドライン

 

1990年の第30会期MEPCにおいて、バラスト水作業部会が設置され、ここで異国種問題に関するガイドラインが作成された。MEPC決議50(31)─船舶バラスト水・沈殿物排出による好ましくない生物・病原体侵入防止のためのガイドライン─が1991年に採択された。

このガイドラインは、船舶バラスト水・沈殿物からの好ましくない水生生物の侵入の危険性を最小化する手段に関する情報を、各主官庁及び各寄港国当局に提供することを目指したものであった。

このガイドラインは、水生生物・病原体が輸送後に生き残る可能性は、塩分濃度、温度、栄養分、光度といった周囲条件のわずかな違いにより減少することを銘記した。バラスト水漲水にあたってきれいな水や沈殿物のみの船内取り入れを確保すべく配慮するよう勧告している。

バラスト水の非排出が不可能な場合、外洋におけるバラスト水交換が、好ましくない種の侵入を制限する方策として提供された。深海大洋の海水は生物をほとんど含まず、また、わずかに存在する種も新たな沿岸又は清水環境に容易には順応しえない。

他のバラスト水管理方策も容認可能であった。当該ガイドラインは、化学物質及び生物殺傷剤による処理、熱処理、酸素欠乏、タンクコーティング、フィルター、紫外線消毒等、将来の可能性を強調していた。

 

 

 

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