日本財団 図書館


4.3 電気化学処理法

平成10年度では、電気化学処理法をリバラスト代替策の候補として海洋生物殺滅実験を中心に実施した。その結果、電気化学処理法は、細菌類およびAlexandrium属シストを含むほとんどの海洋生物に対して高い殺滅能力を持っており、使用する電力も少量で有力な方法であると評価した。ただし、現有する装置は、平板でフィルター状の電極を積層した電解槽に海水を通し、生物が電極に接することで殺滅効果を発揮する。この装置構造では、多量の海水を処理すると電極に海洋生物を含む浮遊物質が付着し、目詰まりが発生する。そのため、実船に適用するには、その対策の検討が課題であるとした。

そこでこの課題検討の第一段階として、現有する最大の装置(直径50cmの円盤型電極を装備した電解槽)を用いて、処理可能水量の実験を行った。実験場所は、ミキサーパイプと同じ佐賀県伊万里市で、3日間にわたって断続的に自然海水を通水した(流量は、装置標準流量の約14m3/hr)。

通水の結果、延べ30hrの通水が可能で、処理海水量は、420m3であった。なお、海水中生物の殺滅効果についても同時に分析し、通水全期間中で十分な効果を発揮していることを確認した。

表II.4.3-1および図II.4.3-1には、実験期間中における電解槽通過前後のサイズ別浮遊物質量と示す。この結果は、電解槽通過前と後の差が電解槽内に付着した物質量を示していることになる。

通水開始初期には、電極の開孔径(100μm)付近以上の粒子(サイズ区分500〜106μmと106〜53μm)だけが付着し、小さな53μm以下の粒子はそのまま電解槽を通過している。しかし、通水時間が経過すると、全サイズ区分の粒子が付着するようになる。この理由は、通水時間が経過すると電極開孔径よりも大きい粒子の付着が進むことで、海水中の粒子が通過可能な開孔径が狭くなり、小さな粒子も付着するようになるためであろう。最終的に実験期間中に電極に付着し、目詰まり原因となった浮遊物質量は、自然海水浮遊物質の14.6%に相当していた。

本年度実験対象のミキサーパイプは、前記したように粒子粉砕能力を持っている。浮遊物質量を測定した各種実験のうち、高い海洋生物殺滅効果が得られる旋回、突起、空気注入の要素を組み入れた実験の粒子粉砕量(処理による全サイズ区分の浮遊物質減少率)は、平均で44.6%である。このことは、電気処理装置の前処理装置としてミキサーパイプを設置することで、海洋生物殺滅の相乗効果と共に、電気処理装置の目詰まりを低減し、処理可能水量の増加につながることを示している。

以上のように、現在のところ処理可能水量の面で、ミキサーパイプ単独処理法およびオゾンとの組み合わせ処理法に比べて大きく劣り、実船への適用性の面で課題が多い。ただし、多くの生物に対して優れた生物殺滅能力を持ち、また、消費エネルギーが少ない利点がある。圧力に強い電極や逆洗方法の技術開発によって、処理可能水量を増やせば実船への適用性は高まると考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION