WGにおける審議では、IFSMA、IAIN、IMPAの通航方法変更(現行のCOLREGs第10条適用から同第9条適用に変更)の提案に対し、ロシア、ギリシャ等は賛意を表明したが、トルコは現行の通航方法(分離通航)の採用以来、事故の数が明確に減少していること、一連の航路のうち狭隘かつ屈曲した一部分について通航方法を変更することは、利用者の混乱を招くこと等を理由として強く反対を唱えた。現行の通航方法を支持する米国、英国、フランス、オランダに対しロシア、ギリシャ、ブルガリア、サイプラスがこれに反対し、米国が中心となって意見の調整が図られたものの議論は終始平行線を辿り、WGとしての意見の一致は見られず、結果としてNew Reportの策定には至らなかった。
プレナリーにおいてWGでの審議結果が報告された後、ギリシャ、ロシア、サイプラスが審議の継続を強く主張したが、米国は、1994年にIMOが採択した通航規則に基づく同海峡における現行の通航方法を施行し、同海域での事故の数が格段に減少している事実に注意を払うべきであり、更にトルコが計画しているVTSの整備等により船舶の安全及び環境の保護が一層図られ、懸案となっている大型船の航行に際して長時間の待機状態も解消されることが期待できることに留意し、当面沿岸国であるトルコの実施するこれら安全対策に期待するとともに、対策につきトルコから定期的にMSCに報告することを前提として本件議論を打ち切るべきとの提案がなされた。これを英国、我が国、イスラエル、ノルウェー等多数が支持し、議長は次のとおり取りまとめた。
1]多数の意見に従い、本件議論は今次会合をもって打ち切る。
2]トルコは1994年に採択されたIMOの規則、勧告を含む現行通航方法を引き続き適用する。
3]トルコは今次会合における検討結果を踏まえ安全対策を推進するとともに、今後実施する新VTS等の安全対策につきMSCに情報提供する。
(5) SAR基金
事務局からMSC71/22/3につき説明がなされた後、我が国は、次のとおり発言した。
1]SAR条約及びSOLAS条約に基づく各国の責務の履行を支援する如何なる措置に関する検討も海上における安全の確保に有益である。
2]提案のSAR基金の設立については、未だその詳細が明らかでないため、その評価を行うことができないが、本件は財政的な問題を含む問題であるので慎重な検討が必要である。
3]仮にCOMSAR4で検討させるとしても、同委員会への委託事項は技術面からの検討に限られるべきである。
我が国の指摘を契機に、スウェーデンは我が国の指摘を正当なものと認識しつつも、早期着手の観点から同提案を支持し、チリ及びナミビアがこれに同調したが、他方、リベリアは緊急案件でもないのにCOMSARから直接総会に提案する必要性は認められず、どのような設備が必要かを十分に議論すべきと指摘し、ブラジルはCOMSARでの検討結果はMSCに報告を要すると指摘、またパナマも基金は政策マターであるからMSCへの報告が必要であると指摘した。