静電気による洗浄中の貨物艙の爆発説がクローズアップされている今日、国際海運会議所(ICS-INTERNATIONAL CHAMBER OF SHPPING)では、事故防止の観点より、同一タンク(区画)内で同時に使用することができるノズルの台数制限を含む一連の安全対策を推奨しています。
貨物艙の洗浄中の汚水のストリッピングの良否は、洗浄効果の点で最も重要な要素です。従ってノズル台数の決定にあたっては、ストリッピングシステムの容量と汚水発生量との見合いを十分考慮する必要があります。ストリッピングシステムの容量は汚水発生量の1.25倍以上あるのが望ましいでしょう。
4] 洗浄水の温度
一般に洗浄水の温度が高いほど洗浄効果は良いといえます。しかしながら油種によっては、高温水による洗浄の結果揮発分が蒸発し、スロップタンク内に回収した油分が凝固することもありますので、油の種類によって洗浄水の温度を適当に選ぶことが重要です。高温水で洗浄を行う場合は、貨物艙内のガスの濃度が、爆発限界外にあることを確認することも必要です。
また、タンク内コーティング・パッキン類などへの影響を避けるため、洗浄水の温度を60℃以下とする方がよいでしょう。
5] 汚水の発生量と処置
ノズルの種類と使用台数、洗浄水圧力及び洗浄時間によって、発生する全汚水量を推定することが可能です。
油水分離のために使用するタンクにより、汚水の扱いは異なってきます。専用タンクを持たないタンカー及び専用タンクを一個しか持たないタンカーでは、洗浄作業と並行してタンクからの水分の排出は行わない方がよいでしょう。
分離した水分を艙外へ排出する場合の汚水の静置時間は、気象・海象の状況等によっても変わり、状況のよい場合は12時間以上の静置を要しないこともありますが、ほとんどの場合、好結果を得るためには24時間以上の静置が必要であり、タンクの容量、タンクの構造等を検討の上、汚水発生量の面からも洗浄作業計画を検討しておかなければなりません。