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3 海洋汚染をなくすために

 

最近の我が国周辺海域における海洋汚染の発生確認件数は、全体的には減少の傾向を示しているが、このような、海洋汚染の減少の傾向は、45年末のいわゆる公害国会以来一連の公害防止関係法令が逐次整備強化され、これらの法令に基づく各種の公害防止施策が講ぜられるとともに、公害問題に対する世論の高まりから関係者の公害防止意識も高まり、その効果が現れてきたものと考えられる。また、運輸省及び海上保安庁が、海事関係者などに対して、関係法令や汚染防止のための具体的な方策等についての指導を強力に推進してきたこと及び海上保安庁が巡視船艇・航空機等を効率的に運用して強力な監視取締りを実施してきたことが、海洋汚染の減少に大きく寄与しているものと考えられる。

しかし、船舶が船底に溜まったビルジを油水分離器を通さずビルジポンプを使用して直接船外に排出していた事例及び陸上から海域に故意に廃棄物を投棄していた事例等悪質なものも依然として跡を絶たない状況にあり、一方、取扱不注意(過失)によるものは、油による汚染の約3割を占めている。このため、海上保安庁は、6月5日の「環境の日」及び11月1日を初日とする一週間を「海洋環境保全推進週間」として集中的な指導を展開するとともに、引き続く10日間を「海上環境事犯一斉取締り」として集中的な取締りを展開するなど海洋環境の保全を図っているところである。

また、船舶の海難等によるものは、全体の海洋汚染発生確認件数の中に占める比率はそれほど高くはないが、平成元年3月のアメリカ・アラスカ州におけるエクソン・バルディーズ号の座礁・油流出事故、平成9年上月に発生したナホトカ号海難・油流出災害等に見られるように、一旦事故が発生すれば、汚染の規模が大きく、海洋環境に与える影響が極めて深刻なものとなるので、これらを防止するため船舶、陸上施設に関わらず日常の整備点検の励行、適切な運航管理の推進等が必要となってくる。

このように、海上保安庁の監視取締りの強化や法規制の強化だけでは海洋汚染を防止しうるものではなく、海に関わる全ての人々が海洋汚染の実態を十分認識して、青い海を未来に残すための努力をしていくことこそが必要である。

 

 

 

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