江戸いろはかるた
「いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせす」
この、47の仮名を重出させずに作られた「いろは歌」は、手習い歌や字母表(じぼひょう)として使われました。この意味は
「色は匂へど散りぬるを、我が世誰ぞ常ならむ、有為(うい)の奥山今日越えて、浅き夢見じ酔(え)ひもせず」
といわれ、「涅槃経(ねはんきょう)」の一節によるといわれています。かっては空海の作という説もありましたが、いまでは否定されています。
この、いろは47字に「ん」の代わりに「京」を加えて48字とし、この48字を題字とする「ことわざ」を使った教訓・教育用のカルタを「いろはかるた」といいます。なお、京、大坂、江戸そのほか地方によってことわざは異なっています。
いろはカルタは、18世紀末にできたものと推定され、正月の家庭遊技として昭和の初期まで続きました。
「江戸いろはかるた」とその解釈を次に掲げます。
い 犬も歩けば棒にあたる
何かをしようとすれば、それだけに災難は多いものだ。また、何かやっているうちには、思いもよらぬ幸運に会うこともある。
ろ 論より証拠
物事は、あれこれ論じるよりも、証拠によって明らかになる。
は 花より団子(だんご)
風流よりは実利をとる。外観よりも実質を重んじる。
に 憎(にく)まれ子世にはばかる
人から憎まれるような人にかぎって、かえって世間で幅をきかせる。
ほ ほね折損(おりぞん)のくたびれ儲(もう)け
せっかく苦労しても何の利益にもならず、疲労だけが残ること。
へ 屁(へ)をひって尻つぼめる
過ちをしたあとで、あわててとりつくろうとすること。
と 年寄りの冷水(ひやみず)
老人が冷水を浴びるような、老齢にふさわしくない元気のよいふるまいや高齢に不相応な危ないことをするのを、ひやかしたり警告したりする言葉。