衝突事件についての海上衝突予防法適用については、「横切り船の航法」適用が約2割、「各種船舶間の航法」および「視界制限状態における航法」適用がそれぞれ約1割、そのほか「追い越し船の航法」「行き合い船の航法」「狭い水道等の航法」適用がみられますが、これら具体的な航法規定適用のほか「船員の常務」の適用が約半数も占めているのが注目されます。なお、「船員の乗務」適用の内容は、錨泊船や漂泊船への衝突、他船前路への進出などとなっています。
前記海上交通三法規定の航法について、マンネリに陥ることなく、手抜きをせず、先に記した「安全運航のABC」を実行することが肝要です。
2 十分に余裕のある時期に措置
海上衝突予防法第8条には、「船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、できる限り十分に余裕のある時期に、船舶の運用上の適切な慣行に従ってためらわずにその動作をとらなければならない。」と書いてあります。
早い時期の確認、早い時期の判断により「十分に余裕のある時期」に動作をとっていれば、その後に相手船が予想外の行動をとってきても(また、居眠りなどで直進して来ても)、衝突を回避できる余裕があり、まさに、このことは安全航法の基本中の基本として重要なルールです。
3 相手に分かり易い行動、意志表示
あなたの意志は相手船に伝わっていると思っていますか。
船舶は鈍重です。相手船の意志、動きを「早めに」「明確に」理解できると、こちらの判断も容易で安全確保の行動がとれます。しかし、多くの船舶は、変針角度が小さかったり、針路信号を確実に行う船舶は少ないように見受けられます。
はっきりわかるような操船をし、かつ汽笛や発光信号による右転、左転、後進などの信号は、必ず実施するようにしましよう。
4 疑問の呼びかけ
見張り不十分や判断ミスの船舶が多く見られます。
接近して来る船舶には引き続き注意を払い、双眼鏡で船橋や甲板上をよく見て、一寸でも不審に思われたら早めに注意喚起信号を発し、また、ちゅうちょせずに警告信号を発し、相手船に適正な航行を求めることが必要です。
なお、停泊中、漂泊中に衝突される事故も多発しており、同様の注意が必要です。