このような海難、こんな馬鹿なことは日本では有り得ないと「対岸の火事」としてはいけません。やはり「他山の石」と謙虚に受け止めるべきです。
2 我が国の事故
最近の我が国の大型旅客フェリーを含む海難事例を見ると、船体の損傷のみに止まっている岸壁接触事故もありますが、時化の中で擱座し、乗客、乗組員等161名が困難な状況下救助されるという事故、さらには、台風の影響で走錨し護岸のテトラポットに接触し危うく乗揚げそうになったもの、入港時防波堤に衝突したものなど、一歩誤れば大惨事になる恐れのあった事故などが発生しています。
洞爺丸の事故、紫雲丸や南海丸の事故はかなり以前のものですが、旅客船事故の恐ろしさを示すものとして、旅客船関係者は遠い過去のものと決して忘れてはならないものです。
旅客船の事故は、悪い状況下で発生すれば何百人、また千人以上の乗客・乗組員の命を奪う恐れを秘めているものです。前記エストニアなどの事故は現在でも、最新の旅客船でもその恐れが現実にあることを如実に示したものです。
なお、旅客船の事故では、他に比べて衝突が多いのが特徴で旅客船事故の中の4割程度も占め、乗揚げも2割程度を占めています。原因も操船不適切が他の船舶に比べて多い割合となっています。
3 海難防止対策
日本海難防止協会では、毎年専門家(訪船アドバイザー)による旅客船の訪船指導という事業を行っています。この訪船指導において示された意見と最近の事故を関連させての主な注意事項を記します。
(1) 海上模様との関係
1] 台風等に対して避泊する場合は、風や波浪の影響の少ない場所を選定すること。
大型フェリーを始め旅客船は一般的に構造上風圧面積が極めて大きいので、この点に留意する必要があります。
2] 当該港についての「運航基準」を遵守すること。
風には強弱があり、また波浪にも大小や方向の違いがあります。特に地方の港は、入り口や港内が比較的狭く、これら気象・海象の影響を直接受け易いので、会社(運航管理者)および船長は風や波浪の強い時の入港については、厳格に、慎重に判断する必要があります。