(4) 一九九三年十一月に開催された第18回総会では、第62回MSC会合結果を踏まえ、決議第七三八号「船舶に対する海賊及び武装強盗の防止並びに抑止に関する方策」(Resolution A. 738(18))を採択した。
この決議では、各国政府に対し従来通り安全対策の強化を要請するに加え、
イ 自国籍船に対し、海賊行為等の予防策、海賊行為等の発生した場合の早期通報に関する手続きを推奨することを強調する。
ロ 近隣国との連携を確立し合同パトロールを含めた協力体制を発展させることを要請する。
ハ 海賊行為等を防止し、即応するための監視体制、探知技術および対応能力の検討を要請する。
ニ 襲撃を受けた場合に救助調整機関等が適切に治安機関に連絡し、緊急対応要領が実行されることを求める。
としており、従来に比べ具体的な防止策につき各国に実施を求めるとともに、近隣国との連携の強化を求めている。
(5) 一九九七年五月に開催された第68回MSC会合では、IMO事務局長に対し、最も頻繁に海賊行為等が発生する国々と協議を行い、当事国に専門家の調査団を派遣するよう求めた。この調査団の目的は訪問先国の代表者に対策の必要性を説き、国および地域レベルで実施する対策の重要性に関し、統治者の意識を高めることにあり、わが国はじめオーストラリア、デンマーク、ギリシャ、オランダ、ノルウェー、パナマ、英国、米国の各国政府、国際海事衛星機関、石油会社国際海事評議会、国際独立タンカー船主協会、国際運輸労働者連合から財政支援を受け、一九九八年十月にインドネシア、マレーシア、フィリピンおよびブラジルに調査団を派遣した。
(6) 一九九八年六月に開催された第69回MCS会合では、中南米、東南アジア、西アフリカおよびインド洋の四地域において地域セミナーを開催することが提案された。
わが国等の財政支援を受けて、同年十月、ブラジルで第一回目の地域セミナーが開催されたのに続き、翌一九九九年二月、シンガポールで東南アジア諸国を中心に一二カ国が参加した「海賊及び船舶に対する武装強盗に関する地域セミナー・ワークショップ」が開催された。同セミナーでは、各国から海賊、取締組織等に関する現状が説明されたほか、海賊・武装強盗が世界各地の特定の地域で頻発している状況を踏まえ、IMOの既存枠組みでは十分に対応できないことおよび国によっては海賊・武装強盗事件を起訴するための法規定が存在していないこと等に着目し、第一号決議「海賊行為・船舶に対する武装強盗の防止・抑圧」を決議した。
この決議では、
イ 沿岸各国に対し、自国の海域・港湾内で海賊行為等を防止し抑圧するために必要なインフラ整備を求める。
ロ 沿岸各国に対し、海賊行為等への対応に関わる煩雑な手続きを減らすことを勧告する。
ハ 通航船舶に警告を発するための統一的な通信手段の手順・ガイドラインを策定するようIMOに提言する。
ことが盛り込まれた。また、犯罪が重罪であることを考慮して国内法上の罰則整備が推奨されるよう法律委員会での検討が望まれるとした第二号決議「海賊行為・船舶に対する武装強盗に対する適切で統一的な罰則」を決議し、「乗組員、乗客、船舶又は船荷に対する暴力事件の捜査に関する規約の草案」が策定された。
(7) 一九九九年五月に開催された第71回MSC会合では、地域セミナーでの決議を考慮し、先の「船舶に対する海賊及び武装強盗の排除のための各国政府への勧告」(MSC/Circ.622)および「船舶に対する海賊行為及び武装強盗を防止並びに抑止にかかる船主、船舶運航者、船長及び乗組員のためのガイド」(MSC/Circ. 623)の改正案が承認され回章に付された。